Hiro

ノクターナル・アニマルズのHiroのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
3.9
「Nocturnal Animals」
一本で二本分の映画を見たような、そんな気持ちになります。どうやったらこんな作品を思いつくんだ…。

とにかく脚本が凄いとしか言いようがない。エドワードが描く作品世界と、現実の世界。最初は少し混乱してしまったけど、後はもうただ飲み込まれるだけでした。どちらもが並行して進んでいく中で、スーザンの世界は変化しないのが印象的。彼女は結局変わらなかった。

そしてジェイクギレンホールが凄い。眼だけで感情が伝わってくるのが本当にすごい。透き通った彼の目がどんどん濁っていくのがうわー…となってしまった。個人的に彼は雨がよく似合うなと思います。

こういう、解釈が人によって分かれる作品大好きです。愛か復讐か、とあるけど私は絶対復讐だと思う。愛な訳がない。個人的に、エドワードが描いた小説の中の登場人物は皆スーザンだったんじゃないかなと思います。エドワードを傷つけた彼女も、何にも主体性を持てない彼女も、母と同じような存在になっている彼女もそこにいた。エドワードにとってあの小説は、爆弾みたいなものだったんじゃないか。

いや、ラストも秀逸でした。あそこで待ってしまうスーザンの愚かさよ。結婚指輪まで外して、エドワードが来ると信じて待って。来るわけがないんだよな彼が。それを気付けずにいるスーザンの事を、変わらない彼女のことを分かっているから、彼はあんなメールを出したんだろう。

これぞサスペンス、という作品でした。湿度の高いこびりつくような復讐劇で堪らなかった。でもちょっと最初の映像には尻込みしてしまいました…あれは何だったんだろう…。
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