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ノクターナル・アニマルズのnozomiのレビュー・感想・評価

ノクターナル・アニマルズ(2016年製作の映画)
3.8
 
トム・フォードが描くスリラー映画。

不眠症に悩まされるアートギャラリーのオーナー・スーザン(エイミー・アダムス)は、仕事は成功し経済的にも安定しているものの、現在の夫・ハットン(アーミー・ハマー)とはすれ違いが続き、心は満たされない生活を送っていた。

ある日、20年前に離婚した元夫のエドワード(ジェイク・ギレンホール)から、彼が執筆した小説の原稿が送られてくる。

「ノクターナル・アニマルズ(夜の獣たち)」というタイトルのその小説は、非常に暴力的な内容だった。彼はなぜ小説を送ってきたのか。衝撃を受けつつも、小説に没頭していくスーザンは、やがて元夫との再会を望むようになる。

ファッションデザイナーのトム・フォードが、「シングルマン」以来、7年ぶりの監督を務めた作品。

「シングルマン」では、主人公の大学教授(コリン・ファース)が最愛の人を亡くして自身も死ぬことを考えるのだが、死を考える彼の日常には薄暗い色しかなく、彼が「生」を感じたときにだけ映像が鮮やかになるという仕掛けがしてある。

今回の作品は、スーザンの現在と過去の回想シーン、エドワードの書いた小説の3つの物語で構成されていて、それぞれの物語のイメージに合わせて明度や彩度、色合いを変えている。

色の持つイメージを沢山利用している所がファッションデザイナーらしいというか…。凄すぎるというか…。「シングルマン」を観た当時も、映像の素晴らしさにとても感動したけど、今回も素晴らしかったです…!

重たい余韻を残してくれるストーリーも良かった。観終わってからしばらくモヤモヤしてたけど…(笑)
 

以下内容について触れてます😊







エドワードの書いた小説はテキサスが舞台の「西部劇」で、西部劇といえばイメージするものは「復讐劇」。そのことから、この映画が「愛」ではなく「復讐」を描いた作品であることが分かる。物語のラストでは、スーザンとの待ち合わせ場所にエドワードは現れない。

赤い口紅が印象的だったスーザンが、最後に口紅を拭い、緑色の服を着ていたのも印象的。緑色は「若さ」をイメージさせる色で、元夫と再会することになった彼女は、彼の小説を読んで昔の自分を思いだし、まるで20年前に戻ったような気持ちになったのかもしれない。けれど過去に彼女が投げ捨てた彼との関係は、すでに手遅れだった。

現代に生きている人たちは、物を大切にしない。すべては消耗品で、人間でさえ捨ててしまう。誰かを大切にするなら、投げ出しても、手放してもいけないというトム・フォードからのメッセージが込められた映画でした。
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