ヴェルヴェっちょ

20センチュリー・ウーマンのヴェルヴェっちょのレビュー・感想・評価

20センチュリー・ウーマン(2016年製作の映画)
3.5
ヒューマンドラマでは説明的な描写、まして台詞などがあればあるほど興醒めするもの。映画は観客の想像の中でこそ完成する。
そういう意味ではセオリーに則った作品だと思います。 およそ起承転結というものが薄く、出来事が散発的で、イメージを掻き立てられる。

1979年、カリフォルニア州南部の町サンタバーバラ。
一人で息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)を育てる55歳のドロシア(アネット・ベニング)は、15歳になり思春期を迎える彼をどう教育したらいいか頭を悩ませていた。
そこで、ルームシェアするパンクな写真家アビー(グレタ・ガーウィング)と、近所に住みジェイミーの幼馴染で友達以上恋人未満の関係にあるジュリー(エル・ファニング)に、彼の成長を手助けしてほしいと願い出る。
時代の転換期を生きる彼女たちとジェイミーの特別な夏がはじまる…。

まず、悪い人が出て来ない。それがリアルでいい。
15歳の多感なジェイミーが、3人の女性とともに成長していくひと夏。
透過する美しい光のもと、丁寧な描写が紡がれる。 実は当たり前に見えている光景が、偶然の積み重ねで、奇跡のような瞬間であるということ。
浮遊感のあるBGMと、合間合間に挿入されるジェイミーのスケボーのシーンは、時代のはざまを漂っているかのようで心地いい。
性に目覚めていく多感な少年だけでなく、女性たちも、人知れぬ悩みを抱えている。 ひとり親であることに自責の念を覚える母親のドロシア。子宮頸がんと診断され、子どもを産めなくなった写真家のアビー。友達以上恋人未満の関係から進めずにいるジュリー。
彼女たちの姿を通して、70年代の終わりという時代もゆるやかに頭の中で像を結ぶような…。 最終的には観客のもとに返ってくるような…観る度に印象が変わりそうな映画。