イチロヲ

黒い雪のイチロヲのレビュー・感想・評価

黒い雪(1965年製作の映画)
3.5
米軍基地で売春宿を経営する母をもつ青年が、跋扈する米兵と共産党員の板挟みに苦悶し、その果てに殺人事件を引き起こしてしまう。その時代の風俗を真摯な姿勢で落とし込んでいる人間ドラマ。「わいせつ図画公然陳列罪」で起訴された作品なのだが、実際のところエロ映画のムードはない(今の感性で観ればの話だけど)。

監督が歌舞伎演出の出身ということもあり、ワンカットの中に必要最低限の情報量を詰め込むのが非常に巧い。フランスのヌーヴェルヴァーグを思い起こさせられるけれど、きちんと換骨奪胎に成功している。とりわけ、米軍のジェット機の爆音により、会話が何度も聞こえなくなる演出が良い。

敗戦国となった日本において「性がどのように扱われるようになったのか」を主軸にしている物語。女性の裸が何度も映像に出てくるので、刺激的ではあるけれど、ポルノとは違う。また、根底にあるものが「反米」であることは火を見るよりも明らか。

映倫審査を通っているにも関わらず起訴されたのが不思議。本当の理由は、本作に内在している、反米メッセージにあるのではなかろうか。