むーしゅ

ソーセージ・パーティーのむーしゅのレビュー・感想・評価

ソーセージ・パーティー(2016年製作の映画)
3.5
 ハリウッドの愛すべきMr.おバカSeth Rogenが製作をつとめた放送禁止用語パラダイスの作品。タイトルとポスターを見れば想像できるとは思いますが、とりあえず家族と見るのはやめましょう。カップルで見るというのも感性が違えば大惨事なので、見るなら同性がオススメですかね?

 スーパーマーケット「ショップウェル」に陳列されている食材達は外の世界に楽園が存在すると信じて、日々買い物カゴへ入れられる日を待ち望んでいた。ある日、ついに選ばれたソーセージのフランクとパンのブレンダがカゴの中で喜びを分かち合う中、返品により戻ってきたハニーマスタードが外の世界で食材達が待ち受ける運命を震えながら語りはじめるが・・・という話。とりあえずJames Francoまた会ったね、という感じでSeth Rogenといつもつるんでいる彼が出ています。そして予告編からわかっていたことではありますが、まぁひどい(良い意味で)映画ですね。

 とりあえずとにかくネタの宝庫なのでどう処理して良いのかわかりませんが、純粋なネタの量だけで勝負するなら「レディ・プレイヤー1」に匹敵するほどです。2つの違いは向こうが夢を詰め込んでいるのに対し、こちらはタブーを詰め込んでいる。ただこのタブーというのが重要で、ここに含まれているのは下ネタだけではない訳ですね。日本人にはあまり馴染みがないので気づきづらいですが、ちゃんと人種や宗教、LGBT、障害など様々な問題を含んでいるということです。昔から「サウスパーク」などで頻発されるテーマですが、タブーを閉じ込めようとせずに社会に投入するのがアメリカ式。確かに差別を助長するという批判も生まれますが、だからこそ差別されてきた人々が普通の暮らしが出来るような制度や仕組みなどが生まれているのも事実なので、一概に悪いとは言い切れません。最終的目標は差別を生まない環境を作ることだとすると、こちらの方が早い解決策かもしれないですしね。そう考えるとこういう映画にしっかり存在価値がある気がします。

 上記のようなことを考えた結果なのかどうかは知りませんが、なんと言っても大事件なのはAlan Menkenが音楽担当として参加しているということですね。アンダー・ザ・シー(リトル・マーメイド)、美女と野獣(美女と野獣)、ホール・ニュー・ワールド(アラジン)で3曲連続アカデミー作曲賞、歌曲賞のダブル受賞を成し遂げたディズニー再建の最重要人物であるAlan Menken。基本ディズニー系か同様の子供向け映画しか担当していないのに、まさかのこんな映画に参加するなんて。単にお祭り騒ぎに参加してみたくなったのかもしれませんが、それだけ注目すべき作品ということです。偉くなっても童心を忘れない、アメリカ人のこういった思考は見習いたいです。

 作品に関してですが、本作は良いか悪いというより完全に好きか嫌いかにつきます。純粋に笑えたか、笑えないかそれだけですね。もし笑えたとしたらなら、今度はどれだけ小ネタ要素を拾えるかが作品の満足度に直結してきます。Edward Nortonが演じるサミー・ベーグル・ジュニアがどう見てもWoody Allenをモデルにしていたり、一緒に行動するカリーム・アブドゥルラヴァシュとやたら仲が悪いのはイスラエル・パレスチナ自治区争いの風刺であったり。また登場人物はだいたいスラングの意味があり、どれだけ笑えるかが英語のスラング認定試験みたいですね。だから何なんだという気もしますが、ストーリーを見る合間に小ネタ探しも楽しみたい作品です。

 そして個人的に興味深かったのはこの作品の製作費です。本作の製作費はおよそ1900万ドルですが、同年公開の「ズートピア」は1億5000万ドル。これだけの差が何によって生まれているのかはわかりませんが、約8分の1で出来てしまったと考えると純粋にすごいなと感じてしまいます。Seth Rogenの中には既に続編構想があるようですが、続編にも是非期待したいですね。
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