KnightsofOdessa

夜行性情欲魔のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

夜行性情欲魔(1970年製作の映画)
4.9
[既成概念を吹き飛ばすソフトポルノ版「去年マリエンバートで」] 99点(OoC)

メツガーは一応セクスプロイテーション監督に分類されるらしいが、周りにいるラス・メイヤーとかティント・ブラス、ジェス・フランコなんかと比べると本作品の描写はソフトでしかも芸術的だ。実際のところメツガーがセクスプロイテーション目当てで本作品を作ったとは思えないし、意図的に作られた"混乱"には身構えていないと混乱するだろう。

冒頭で引用されるピランデッロ『作者を探す六人の登場人物』の"今日の現実とは、明日にはほんの幻影に変わってしまう"というセリフに本作品の主題が縮約されている。こうして映画内映画と映画の登場人物入れ替え・変更・シンクロ、挿入されるフラッシュフォワード、巻き戻し、結末を先に提示するセリフなどメタ的要素が正当化され、主演が入れ替わったポルノ映画を元の演者たちが見るラストへ流れ込むことで反転した円環構造("打ち返し"とでも言うべきか)が完成する。この手の時系列破壊は「去年マリエンバートで」に似ている。

あの手の巻き戻しって好きなんだけど、ハネケは本作品を見たのだろうか。そして、全然夜行性でもなんでもないのはウケる。

追記
家族全員と関係を持つ侵入者という意味では「テオレマ」にも似てるけど、あっちはブルジョワ批判の意味が強いからやっぱり「去年マリエンバートで」だな。
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