みうらまさき

ルームのみうらまさきのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
3.8
「おはよう」と、家具たちに挨拶をする。生まれてから部屋の中の世界しか知らないジャックにとって、自分とママと部屋にあるすべてのものだけが”本物”だ。その小さな世界から抜け出して新しい世界を知る。ママ以外の人間と関わること、自然と触れ合うこと、テレビの中でしか見たことのない様々なものとの出会い…。本来なら楽しいと感じられる事なのかもしれないが、監禁されていた事による急激な環境の変化に対応しようにもしきれず、周囲の人間の反応もどこか余所余所しく時に攻撃的に感じてしまう。やっとの思いで得た自由のはずなのに、いい事ばかりではない歯痒さに苛立つ母親のジョイが妙にリアルだった。それでもこの物語は、母と子が問題と向き合いその先に希望を予感させ、世界は広く無限の可能性に満ちていると伝えてくる。自分が今いる世界の扉を開けるのは、他ならぬ自分なのだと勇気づけられた。