リッジスカイウォーカー

ルームのリッジスカイウォーカーのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
4.5
とてつもない衝撃を受けました…。。


序盤は一体なんでこんなことになっているのか全くわからない。
なぜこんな奇妙な生活をしてるのか。
途中で男がやってくるけれども、そいつに養われているのか。


子どもが5才になり、母親からだんだんと状況の説明がなされ、真実が分かります。


それまで首を傾げながらも、いつまでこの場面が続くんだろ?なんていう呆れた感想しか持てなかった自分が悔しい。


子どもには到底わからない真実。
外の世界を全く知らないなら尚更だ。

でも無条件で信じられるのは母親の言葉。
子どもは母を信じるのだ。
その関係性が、この状況からの脱出をより緊迫にする。

もう目が釘付けだ。
果たして脱出はうまくいくのか。
子どもだから失敗してしまうかもしれない。
固唾を飲むしかない。
手助けできない歯痒さもどかしさに包まれる。


最近日本でも監禁先から脱出して警察に駆け込んだ。近所の人に助けを求めて保護された。そういうニュースを見る。

優しさと思いやりで繋がった社会が、悪を寄せ付けない空間を作ることができるのだと思う。だからみんなでそういう繋がりを作る事は大事ですよね。


車から飛び降りて最初にあった人、マジでグッジョブだよ。

そもそも肝が座ってないクソ犯人が狼狽て逃げていく姿に安堵が広がる。


断片的な情報から真実を突き止めていく女性警察官が有能。


母と子の再会は、もう感動しかないよ…。



からの、今度は外の世界を知らない子ども目線の話に変わっていく。

何を見ても全てが初。
目まぐるしい情報量に戸惑いながらも受け入れていく演技が素晴らしい。

世界はこんなにカラフルで美しいんだ!ということが彼を通して伝わってくる。
と同時に、その自由を奪っていた人間への憎悪が同時に襲ってくる。

ここで序盤のあの「へや」の生活が、ベットりと脳から離れない。
この対比がストーリーの厚みを増している。

世界がクソだっ!って思ってしまっていた時期は自分にもあるけど、当たり前だと美しさに気づかないんだよなぁ…。

瞳を通して映される世界に感動できるのは、自分の心次第だと気づかされる。


そしてこの作品、ただ助かったねじゃ終わらない。母親の心の再生が始まるところまでをしっかりと描いているのだ。
しかもジィジ、バァバの心情まで…。
いやー、すごい。


自分の子どもが誘拐されてから助かるまでの7年間。きっともういろんな事があったであろうことが窺える。

ジィジとバァバの関係。
ジィジが孫と目が合わせられないこと。
優しい子に育って、という教えがこの悲劇を生んだという怒り、トラウマ。

もう何気ない仕草、断片的なセリフから、失われた時間を察することができる。


心ないテレビのインタビューもそう。
セラピーにはならない。
心を傷つけ、精神的に追い込むだけなのだ。


失われた時間を一気に取り戻そうとすれば、心はついて来れない。
失ってしまった時間が長いほど、じっくりと少しずつ、ゆっくりと周りに身を任せることが必要なのかもしれない。

母と子だけだった世界から、他の生き物がいる世界に移ったことで、世界は二人だけではない、ということを受け入れることが、少しずつセラピーになるのだと思った。

友達、食べ物、おもちゃ、自由。

そんな中、犬はもう絶対的な味方なんだ!ということも瞬時に分かる演出が素晴らしい。

ドッグセラピーってあるけど、これは本当に絶大だろうなって察した。
人では癒せない傷っていうものが、絶対的に存在してしまうのだなとも逆に思った。


逃げるのではなくゆっくりと受け入れていく。そんな静かなラストに確かなリアルを感じることができました。


いやー、すごい映画を観ました。
アカデミー賞にノミネートされたのも納得の作品。

あのクソ犯人を抜かして、全てのキャストの演技が素晴らしい。

ブリー・ラーソンは言わずもがな。
あの子役も素晴らしかった。


人の自由と尊厳を奪う人間は、更生しなくてよい。許せない。一生誰かのために、罪を償ってほしい。

もう2度と観たくないけど、一度は観て欲しい。これは名作ですね。