ちろる

ザ・ダンサーのちろるのレビュー・感想・評価

ザ・ダンサー(2016年製作の映画)
3.9
クラシカルなダンスが主流だった19世紀末、ロイの光とシルクのダンスはロートレック、ロダン、コクトーら多くの芸術家たちを魅力したという。
ダンスを人間の動きの美としてではなく、構造として考えるロイの舞台演出までこだわる情熱はあまりにも激しすぎた。

ベルエポックの時代のクラシカルな世界にロイやロイに群がるダンサー達が魂を込めた斬新なダンスを繰り広げるシーンは異色で、もっともっと見ていたいと思った。
そんなロイに脅威を与えるイサドラの存在。
リリーローズ デップの妖精のような美しさがもう既に威圧感なのだがら結局は迷いのない目をしたものが勝ちなのだ。
激しすぎるダンスによる身体の痛みから解放されず、戸惑いと不安に苛まれていくロイとは対照的にロイを慕いながらも挑発的な目が印象的なイサドラ。
どんなに気が強い女だってあんな子が目の前に現れたらそりゃ怯えるわ。
ダンサーの狂気と嫉妬を描いた「ブラックスワン」を思い出すけれど、この主人公ロイは人間らしく人並みの弱さがある上、後半はかなり振り回されるので痛々しい。
真っ赤に充血した目、満身創痍の身体、朦朧とした意識とルイの抜けたような視線。
刹那的な人生を描いた作品は好きだけど、ロイのこれらは正直これはずっと辛かった。
ラストの魂のぶつかりは彼女の苦しみと愛の形なのだから絶対に見届けなければいけないのだけど、見てる方まで目が痛みそうなのでくれぐれもお気をつけて。

中盤からラストまで評判通りのSOKOのダンスは素晴らしかったが、それだけではなくベル エポック時代のフランスの重厚感のあるインテリアや、衣装もしっかりとこだわっていて、細部まで見応えのある作品でした。
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