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スリー・オブ・アスのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

スリー・オブ・アス(2015年製作の映画)
3.8
イランのパーレビ国王時代に10年服役し、その後も圧政と闘い続けた政治犯の家族の物語。実話です。フランスのコメディアンであるケイロン監督の父が主人公。監督自身が父親を演じている。非常にシリアスな内容ながら、希望を失わず闘い続ける人びとを温かく見守り、コメディタッチで描いた良作。愛が溢れていた。

政治活動の土台が政敵への憎しみではなく、同胞への愛から湧いていた。民主化を進めるためには銃を持たず、非暴力で闘う。

父親イバットは、12人兄弟の大家族に育ち、弁護士になったが、学生活動家のリーダーとして投獄される。刑務所内でも、反政府の姿勢を崩さないため、拷問、独房と酷い仕打ちを受けても信念を曲げない。

イラン革命の機運の高まりにより釈放されたが、新政権が民主化を圧すると再び活動し、指名手配される。既に結婚し、家庭を持ち、義理の家族をも巻き添えにし、隠れながら逃げながら活動。

妻がとても素敵。強くたくましく賢い。義理の両親も愛情溢れおおらか。巻き込まれている娘を心配はするものの、命懸けで闘う義理の息子を誇らしく思い、二人に協力し続ける。フランスへの亡命もトルコとの国境の雪山越えまで命懸けで送って行く。

同胞への愛は家族愛の延長線にあり、家族愛が強いから同胞への愛も深い。フランスへ亡命後もイランの民主化運動を続ける一方、町のコミュニティに社会貢献する夫婦。居場所のない移民達の問題解決や調停、教育をして、恵まれない人びとを支援する。

妻が夫を「彼は誰も見捨てない人だから」と誇らしげに語るのがよかった。

家族愛、兄弟愛、夫婦愛、親子愛のいっぱい詰まったいい作品だった。

エピソード一つ一つは緊張感あるのに、コメディアンらしく、ほほえましいオブラートに包んでいる。厳しい局面は、家族がいたから前へ進めたのだろう。深刻に描かなくても、政治犯の心の拠り所と目指すことが伝わってきた。人間は捨てたものではないと、希望を感じられた。
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