きえ

暗殺のきえのレビュー・感想・評価

暗殺(2015年製作の映画)
4.3
1930年代、日本統治下の朝鮮を舞台に祖国独立を目指す韓国臨時政府が企てた日本政府要人及び親日派暗殺計画を巡り、独立軍最高スナイパー(チョン・ジヒョン)、臨時政府警務隊長(イ・ジョンジェ)、凄腕の殺し屋(ハ・ジョンウ)の運命の交錯を壮大なスケールで描く。

扱う事が非常に難しい時代設定。
ともすれば抗日映画と言うレッテルを貼られかねない。それを一級エンターテイメント作品に仕上げた手腕は見事だし、観終わってみると抗日映画にもなっていない。

愛国心とは何か?その国に生まれた者が持つ誇りとは何なのか…?
戦後70年が経ちこの失われつつある感情は、日本のみならず韓国も同じなのかもしれない。この映画が韓国国内で爆発的ヒットをしたのは、失いかけてた物を想起させたからではないだろうか。

何故ならこの映画で描かれる最大の敵は、『戦争もなしに』占領した日本人ではなく
『戦争もなしに』祖国を売り渡した同胞
だから。裏切り者が最大の敵であり憎むべき相手なのだ。

その為に戦う。これは『戦争なしに』祖国を売り渡した者に対する『戦争』の物語だった。

『例え独立が成功しないとしても戦う姿を見せる事に意味がある』と女スナイパーは言う。『俺たちを忘れないでくれ』とある男は言う。歴史に残らない者の信念がこの映画の主役だ。

一方で”信念”が裏切りを招く。
裏切りなのか信念なのかボーダーレス。

信念に貫かれた物語が裏切りと言うスパイスで濃厚な味を生み出す140分。そこに家族の哀しい物語を加え、1秒たりとも飽きる事のない脚本は1秒たりとも無駄がない

元々緊迫感のある時代設定に加えて、ハリウッドもびっくりな壮大なアクションシーンに心臓の鼓動はマックス。疑心暗鬼になりそうな人物相関に脳もフル稼働で関係を探る。眠気を誘う要素は皆無!

加えてキャストがはまりまくってる。
特に『猟奇的な彼女』でお馴染みのチョン・ジヒョン演じる女スナイパーがとにかくカッコいい。ニコリともしない女の目は信念を奥に秘め一瞬たりとも視線を逸らさない。その強い目力と男前度はゾクゾクした色気に包まれ美しい。一見の価値あり!男性なら機関銃をぶっ放すシーンに心撃ち抜かれる事間違いなし!

女性ならハ・ジョンウ演じる謎の男ハワイ・ピストル(名前からして謎^^;)のカッコよさと不思議な包容力にハマるだろう。

1930年代の中国・杭州、上海、京城(現ソウル)を舞台に繰り広げられるクラシカルで上質な極限の人間ドラマは『ラスト・コーション』を彷彿とさせる。(同じ上海影視楽園で撮影されたのかな?)

韓国映画なんだけどジョン・ウー監督の描く香港映画にも近い。それを彷彿とさせる印象的なシーンがある。
警務隊長であり密偵のキムが書類を太ももに叩きながら歩く後ろ姿を引きで撮ったシーン。これは間違いなく『インファナルアフェア』へのオマージュだよねw

映画は結局好みだと思う。
その意味で私はこう言う時代背景のこう言う作品が大好物。早くも今年観た映画のトップ1に。なので本当は☆5.0

0.2マイナスなのは、日本語のシーン。
親日派が離す日本語がたどたどしいのはいいとしても、日本人の役名でたどたどしい発音は明らかにゲンナリ。前半は特に多いので気になって仕方なかった。
全て韓国の役者さんが演じてるのでこうなる訳だけど、せめて日本人を演じるのは日本人の役者に出来なかったのかな?

そこだけ本当に残念。
他のクオリティがいいだけにかなり残念!

でも素晴らしいエンターテイメント作品だった。早くもまた観たい‼︎
きえ

きえ