設定はコメディながら、最後は社会派シリアスで終わるという冒険作。ドイツで制作した勇気を称賛し、アメリカで上映されない病理を憂う。
ヒトラーをただの悪魔として描くのでなく、専らドイツをよりよくしようという確固たる信念と行動力とプロパガンダを備えた、政治家として巧みにとらえなおしていた。
他方、多くの現代のドイツ市民、コメディアンとして受け止めていたヒトラーにいつの間にか心酔してしまう、まるでナチスをつくりあげた時代の再現のようで、現代の移民排斥の画をコラージュすることで、萌芽が現在もなお蔓延していることを不気味にも浮かび上がらせた。ヒトラーの正体を見破った、現代に生きるユダヤ人の痴ほうの老婆の言葉が重い。