ユースケ

インスマスを覆う影のユースケのネタバレレビュー・内容・結末

インスマスを覆う影(1992年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの【インスマスを覆う影】を、Jホラーの恐怖表現に大きな影響を与えた小中理論の提唱者である小中千昭(監督&脚本)とNHKの【ごごナマ】でクトゥルフ神話を熱弁した佐野史郎(主演)の二人のラブクラフティアンがテレビ映画化した本作は、物語の舞台を1920年代後半のニューイングランドから1990年代前半の日本に移し、絶妙な和風アレンジを加え、取っ付き難いクトゥルフ神話を気軽に楽しませてくれる一本。クトゥルフ神話と日本の相性は抜群です。

物語の舞台となるひなびた漁村のロケーションも、バックで流れるKAZZ TOYAMAのメランコリックな音楽も、若狭新一の特殊メイクによるインスマス面の再現も素晴らしいのですが、なによりも、否定していた奇妙な世界を肯定せざるを得ない状況に追い込まれた主人公の佐野史郎が醸し出すクトゥルフ神話特有の諦め感が素晴らしい。

蔭洲升(インスマス)や赤牟(アーカム)など、クトゥルフ神話ではお馴染みの地名の和風アレンジも秀逸。蔭洲升の住民の名字がみんな藤宮(不死身や)なのはやりすぎだと思いましたが、クライマックスで表記される主人公のペンネームの愛巧太(ラブクラフト)にはシビれました。

ちなみに、劇中に登場する魔道書ネクロノミコンは佐野史郎が自作した私物だそうです。
Amazonで中古VHSが2万円のプレミア価格で販売されていますが、今ならYouTubeで見れちゃいます。