写真家ソール・ライター。NHKの日曜美術館の再放送で取り上げられていたのを観て、その作品に衝撃を受けた。彼のドキュメンタリー映画があると知り、すぐに鑑賞。
まさに哲学者だ。美の哲学者。それも権威や知識や名声などには関心を示さず、自分が美しいと思うモノを静かに追求する。売れるとか売れないなどという事など考えてもいない。
良い写真とはなにが写っているのかよく観ないと分からないようなのが良い。目を凝らしたりいろいろと想像を巡らせたりする事で何かがみえてくる。彼はそういうモノを美しいと感じ、写してきた。
今も昔も写真は主役にピントが合い、被写体が立ち上がり、一眼見て美しいと知れるようなのが評価される。なにより分かりやすさが重要なのだ。(同様に誰が観ても分かりにくいというのも表裏一体だろう)そんな観点からすれば彼の写真は下手くそで素人じみてみえるかもしれない。しかし、そんな写真を撮るのはとてつもなく簡単なことではない。
彼の写真は期せずして、モノの見方や生き方、幸せとななにかを柔らかく深く問いかける。外の世界をどう読み解き、見つめるか。そこに美しさはあるか。彼の写真はまさに哲学なのだ。