アルフ

ジョン・F・ドノヴァンの死と生のアルフのレビュー・感想・評価

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グザヴィエ・ドラン監督の新作『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』の一般試写会に行ってきた。
全編を通して陰影と補色のバランスが絶妙で、見惚れるまでに美しい画面。
産毛まで見えるほどに近づいたアップと俯瞰からのアングルを多用し、見る者に所在の無さを感じさせるカメラワーク。
物語の展開を捻り上げるように鳴り響く効果音や、場面の情景と登場人物の心情に合わせて流れる楽曲。
名優たちの細かな動作や表情まで細かく演出していることを思わせる、整理されて破綻の無い編集。
それらのすべてにおいて、あまりに統制が取れているがために、不自然なまでにベタなシーンの連続で戸惑うこともあったが、一方で、これはワザとなのかもしれないと思わされもした。
たぶん主人公のジョン・F・ドヴァンニとルパートの2人の、その理想することと裏腹な生き様にリンクしていたからだろうか。
誰にも理解されない、という嘆きと、誰にも理解されたくない、という怒りのようなもの。
相反することも自分の心に平気で共存してしまうという現実を見て、かなり心が騒つかされた。
人の才能は誰かに見出されるものではあるけれど、自分の望む"真実"は、例え家族であっても大して興味を持たれないことがある。
この寂しさを克服するためにはどうすればいいのか。
そんな迷いをまるで恥じらうかのように、“わかりやすさ“で覆い隠しているようにも見えたのだが、これはいささか深読みが過ぎるだろうか。
気にはなるものの、ただ、それに触れようとすれば、この若い監督に野暮だと言われてしまうような気もする。
毛糸のセーターのように暖かいけれど、首回りがチクチクしてしょうがない、そんな映画だった。
by KO
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