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パラサイト 半地下の家族のアルフのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.3
貧困層と富裕層の一見分かりやすい対比構造に貫かれた本作。主人が主人であり得るのは奴隷への全的な依存によってであり、奴隷という存在への搾取と依存を通して主人は主人となることができる。奴隷は奴隷の労働を通して自己に目覚め、自由と自立の獲得のために奮闘するが、主人は消費に没頭しそれを失っていく。意識において真に自立しているのは奴隷の方であり、そのことが明らかになる時、主人と奴隷の立場は逆転する。支配-被支配の関係は本質的に相互承認に基づいており、絶えず転覆させられる可能性をはらんだ闘争的なものなのだ。ヘーゲルの唱えたこの有名な主人と奴隷の弁証法の構造を本作も反復するが、互いが互いにパラサイトしあうという二項対立的な関係は奴隷同士の争いが描かれることによって複層化されている。弱者同士の殺し合いを経て主人の殺害に至るこの闘争は、決して正、反、合という弁証法の完成に到達することはない。本作は現代資本主義の階級間の断絶の深さを見事に抉り出した傑作である。そして輸入品とネイティブ・アメリカンの挿話によって真のパラサイトとは誰なのか暗に仄めかされていたようにも思う。

二回目観て気付いたこと追加。
食卓の椅子が中盤以降8脚→10脚に増えている。終盤、ほんの一瞬スノーピークのギガパワープレートバーナーの箱が映し出される。
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