アルフ

万引き家族のアルフのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.4
家の中の物量感、くたびれた服、布団の染みに至るまで貧しさを構成する物の配置が絶妙。ごちゃごちゃと散らかして汚くすれば貧乏っぽく見えるんじゃない。家の埃や油まで見えてくるような生活の堆積が感じられる映画。

そして貧困や窃盗は個人の選択の結果の自己責任ではなく、強いられたものという批判意識に貫かれている。年金にすがって非正規で働きながらも生活がままならない一家が万引きするのは食べものだからだ。

「飢えをしのぐために少量の食物を盗むことは犯罪には当たらない」という判例がかつてイタリアで出たことがあるけれど、この国ではどうも「いくら貧しくても犯罪はダメだ」という道徳観が支配的だ。

犯罪を余儀なくされている人たちが、犯罪を通して繋がり、家族になり、解体させられる本作は、血縁主義を超えた愛みたいな馬鹿みたいなテーマではぜんぜんない。むしろ「近代家族」や「愛」や「犯罪」の成立の条件そのものをえぐっている。

犯罪はいけませんという「正しい」モラルこそが犯罪を欲望し、対立軸を先鋭化させ、生の圧倒的な非対称性を容認させる力になっていることを暴露している。社会からの避難所のようなあの家に、あのような人々が結びついて住み続けることを許さない力が蔓延しているのが今の日本なのだということを描き出している。
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