映画館跡で偶然見た、母親が主演する映画を完成させる物語。
カンボジアのプノンペン。内戦前に盛んだった映画文化もクメール・ルージュの圧政によって壊滅に追いやられ、映画館の前から行列が無くなったそうです。
この映画のメインの舞台は、映画館跡。今は駐輪場として営業しています。客席もスクリーンも傷んではいるものの昔のまま。
この絵面がたまりません。映画館の空間に潜む情緒的な雰囲気が醸し出され、何かが始まる予感がにじみ出ています。
最終巻のフィルムだけ現存しない40年前の映画を、娘は母に代わって演じ完成させようとします。完成に向かうに連れて家族や40年前の関係者に関する事実が明らかになって行きます。
クメール・ルージュ時代、映画監督や俳優は粛清の対象となったそうです。反革命分子とされたんですね。彼らは殺され、それまでに製作されていた映画のフィルムも大半が処分されたとのことです。
母親が主演する映画もクメール・ルージュにより抹殺されていたもの。それを40年の時を超えて完成させようとするわけですから、きっとカンボジアの映画ファンにはたまらない物語だと思います。
どんなにカンボジアのことを学んでも、よそ者には理解出来ないであろう哀しみを想う映画です。
作品の完成度としては高くないかもしれませんが、監督の想いがしっかり乗っている作品だと思います。