ブームの波に乗って、このところ自転車レースを題材とした映画がいくつか出てきたが、自らロードレーサーを駆る人間としては、この作品も初日から出かけた。
映像にそれほど期待していたわけではないのだが、とにかくこれが素晴らしい。物語はひとつのプロ・ロードレースのチームに所属した3人の男との栄光と挫折、それに伴う友情と恋愛模様を描いたものだが、とにかく観ているうちにその迫力ある自転車レースの映像や美しい風景、そして計算され尽くされた人物の配置など、この作品を撮った監督は只者ではないと感じた。
事前知識ゼロで観たので、この作品の監督が香港の犯罪映画で名を成しているダンテ・ラムだとは気づかずに観ていた。とにかく極力セリフを省略して、映像で表現していこうとする姿勢が徹底されていて、登場人物たちがいたずらに喋る冗漫なシーンがない。
舞台は台湾、韓国、中国とアジアの各地、その地で行われる自転車レースが、ドラマの合間に挟まれていく。そのバランスも実に快い。3人はやがて、それぞれ別のチームに所属して、ライバル関係になるのだが、彼らが競うレース映像も観ていてかなりワクワクする。
これまで観た自転車関係の映画ではまさに最高の作品かもしれない。もちろん、自転車乗りでなくとも、丁寧なナレーションも入り、じゅうぶんに楽しめる。
2時間超の作品だが、まったくその時間を感じなかった。これを観て、ロードレーサーに乗りたいという人間はたくさん現れるにちがいない。ダンテ・ラムの犯罪映画も観てみようか。