MikiMickle

メッセージのMikiMickleのレビュー・感想・評価

メッセージ(2016年製作の映画)
3.9
原作はテッド・チャンの「あなたの人生の物語」

言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)。幼くして亡くした娘を思いながら、ひとり静かな湖畔の家に住み、大学で教鞭をとっている。

ある時、地球各地に12機の巨大な謎の物体が突然現れる。UFOと思われるその物体。
彼女は軍大佐のウェーバー(フォレスト・ウィテカー)の要請の元、物理学者のイアン・ドネリー(ジェレミー・レナー)と共に、その調査を行う。
18時間毎に開く扉。内部は人類の価値観とは違う空間だった。
そして、出会う2体の地球外生命体。
彼らをヘプタポッドと、それぞれの個体にはアボットとコステロ(昔のコメディアン)と名前を付け、彼らとの交信を進めていく。
“なぜやってきたのか?”を知るために。


未知なる地球外生命体。それと接触する時、人は恐怖におののくだろう。
前半はまず、その恐ろしさが見事に演出されていた。
地球の概念と違う内部の重量と気圧の宇宙船内の謎。未知の生命体の出現。彼らの発する音は奇妙で不気味…BGMの重低音がそれと区別もなく相まっており、宇宙船内に居なくてもずっとその存在が常に漂っている感じ…… 常に不安感が漂う。

今作は第89回アカデミー賞で8部門にノミネートされたのだが、そのひとつである脚本のエリック・ハイセラ(米脚本家組合賞では脚色賞を受賞)はホラー畑の人。(ホラーファンとしては本当に嬉しい。)
そして、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の、重くのしかかるような映像と、ヨハン・ヨハンソンの音による恐怖感の暗喩的な具現化。
それらが相まって、未知への恐怖をしみじみと感じるものだった。人類のパニック表現もしかり。

しかし、それはあくまで極前半のものである。
ホラー部分に熱くなってごめんなさい。この映画の本質はホラーとは違う。
物語はどんどんと深いものへと進んでいく。

ストーリーに戻ると、ルイーズたちはヘプタポッドたちとゆっくりゆっくり意思疎通を図っていく。彼らが墨の様なもので描く、まるでロールシャッハのような円形の文字が出現した時は鳥肌がたった。美しく、深い……

そしてそれの意味を解明していく様は、まるで古代文字を解明していく新たな発見の興奮を見ているかのような…いや、もちろんそれよりも興奮する事例なのだけれど、過去の言語学者たちが“言葉”というものを解明する追体験みたいなものを感じた。その興奮を。そして、彼が何をしに来たのか………

調査を進めるにつれ、娘の思い出のフラッシュバックが頻繁に起こるようになるルイーズ…… 一方で、協力しあってきた各国は分裂してしまい…

ネタバレ故にここまでしか書かないが、前述した未知への恐怖の表現から始まり、様々な要素が何層にも重なりあうものだった。
哲学的SFでありつつ、「言語」「相互理解」を考えさせられ、また、「時空間」の観念の新表現の素晴らしさは驚きを隠せない。驚愕だった。そして彼らの伝えようとしたメッセージとは…

正直、冒頭のシーンだけで涙がでたのたが、最期は号泣しかなかった。素晴らしい人間ドラマ。あなたならどうする?と問われているかのようだった。
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