こたつむり

リメンバー・ミーのこたつむりのレビュー・感想・評価

リメンバー・ミー(2017年製作の映画)
4.3
★ 僕はこの映画のことを忘れない

思わず「さすがはピクサー」と言いたくなるほどに完成度が高い作品でした。

特に緻密なビジュアルは圧巻の一言。
“死者の日”を華やかに描いた背景。ギターを弾くときの指使い。顔に刻み込まれたシワのひとつひとつに感じる息吹。何よりも配色の鮮やかさとバランスの良さは群を抜いています。

また、見た目だけじゃなく練り込まれた脚本。
気付けば、主人公の《ミゲル》と一体になっている丁寧さは“生きた教科書”と言えましょう。大多数を狙うとはこういうこと。子供騙しでもなく、大人に媚びることもなく。物語が躍動しているのです。

ただ、完成度が高いゆえに。
欲が出てしまうのが人間の悲しいところ。
本作は“前向きな死生観”を扱っていますが、他にも“家族の物語”やら“確執からの解放”も描いているので、主菜に辿り着く前に涙腺が崩壊してしまうのです。

もうね。これはヒドい話ですよ。
僕は今回、映画鑑賞時に必ず持っていく目薬を忘れたのですが、そんな心配は不要だったのです。それだと目薬の立場がないじゃないですか。ね。ヒドイ話でしょ。

なんてツンデレを演じたくなるほどに。
この時期の鑑賞はちょうど良いかもしれません。鑑賞後に「花粉がヒドくてさあ」なんて言い訳できますからね。個人的には“おばあちゃんの笑顔”がクライマックスでした。

それにしても。
最近のディズニーは、様々な国の価値観を取り入れた作品を作っていますね(マーベルシリーズもアフリカンだったし)。本作もメキシコの雰囲気がたっぷりで、うちの愚息も「こわくないガイコツもいるんだ」なんて言っていました。

ディズニーはあまりにも商売上手なので揶揄されることも多いですが“世界の懸け橋”となる役割を自覚しているのは、最高に素敵な話だと思います。

まあ、そんなわけで。
老いも若きも誰もが楽しめる物語。
…ではありますけども、死生観を扱った物語なので低年齢層(未就学児)には厳しいかもしれません。特に魂を導く存在《ペピータ》の外観はトラウマ級に怖いです。まあ、慣れれば可愛いのですが、それでもあの造形を商品化するのは…さすが、ディズニー。チャレンジ精神も忘れていないのですね。
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