ミシェル・ウィリアムズとマティアス・スーナールツの好演が光る。
堅苦しい“家”に縛られた内気な若妻、その屋敷に滞在する敵国の将校。
ピアノを介して、絆を深める男女。
ふたりが心を通わせていく過程が印象的。
リュシルの秘めた熱情が放たれるシーン、ブルーノが任務と良心の狭間で苦悩する姿は胸に迫る。
叶わぬ恋を諦め、逞しく立ち上がるリュシルと、どこまでも寡黙で孤高のブルーノ。
憂い漂う佇まいのふたりが、言葉なく、じっと見つめ合う表情に涙。
ブルーノの虚ろで哀しげな眼差しが、いつまでも脳裏に残る。
劇中、ナチス・ヒトラーの表現を排除しているのも感慨深い。
姑役、クリスティン・スコット・トーマスの存在感がドラマを引き締める。
秀作。