hi1oaki

葛城事件のhi1oakiのレビュー・感想・評価

葛城事件(2016年製作の映画)
3.6
全体に共通する食事シーンの気不味さが、とっくに壊れていた家族を物語り、メシを食ったり何かを飲んでいる時はだいたい嫌なことが起こる。
この作品は父親にも息子にも薄っぺらい社会批判めいた言葉を語らせる。それどころか田中麗奈演じる星野順子の語る理想や行動も説得力に欠ける。
劇中で“あなたそれでも人間ですか”という台詞があるけれど、“それでこそ人間なんじゃないのかな”と思わされた。
この作品が語りたいのは問題提起や愛情の力、罪の重さなどではなく、底をひっぺがしたさらに底。決して人ごとだとは言い切れない、生活と地続きの地獄を淡々と観せることなのだと思う。
そして最後の最後、あのシーンに辿り着いたことがこの作品の存在意義になっている。正直“こんなもんか…”と思わされかけた作品にパワーが宿った。

ただ…わかりやすいたとえとして引用しているのは理解できるんだけど、コンビニ弁当を悪者にしすぎかと。熱心に開発してる人もいるのだから、そこまで負の象徴みたいにしなくてもね…。個人的には家で作ったものが尊く、出来合いのものは卑しいという考え方はあまり好きではなく、たとえ手作りだとしてもそれが無条件で賞賛されるべきものであるとは思わない。その語り口って結局、作中で語られる類いの“どこかで聞いたことのあるもっともらしい理論”な気もした。
hi1oaki

hi1oaki