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オッペンハイマーのhi1oakiのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
映像よりも音。物理を音で表現している映像作品として優れていると思う。

ノーランの新作を半年以上待たないと劇場で観れないってどんだけカルチャー後進国なんだよ。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で米国アカデミー受賞後の方が人呼びやすいって味しめちゃったっていうのもある?
昨今の洋画不況の映画館事情は理解しているつもりだけど、米国アカデミー賞以外でも世界中で評価されているこの作品を、一部の批判を恐れてアカデミーのお墨付きが無いと公開できないという配給会社勢の弱腰こそ自分達の首を絞め続けていると思う。今後も洋画に人が集まらない状況は続くでしょうね。それこそゴジラがお墨付き貰っちゃったし。

この映画を“戦勝国が広島や長崎の惨状を描いていない”とか“原爆礼賛映画なんて日本人が観るべきではない”とか、“作品を観ずに”批判する人も多いけど、それはちょっと的外れな愛国心かと。そもそもそういう人達はドイツが降伏した後でも戦争がもっと続いて日本という国が無くなるくらいに攻め込まれて破壊された方が良かったのかな? 大戦時に日本にもドイツにも一切の非が無かったと主張するのかな? もちろん自分も原爆が最良の答えだったとは思わないけど、そこに至る過程がどうであったかという事が広く知られる事は悪くないと思う。

いやそもそもこの映画、“原爆で戦争を終わらせるぜ!”っていうのが核じゃない。
原爆で戦争を終わらせた事への歓喜と気まずさを表裏で丁寧に描いているのは言わずもがな、タイトルの通りオッペンハイマーという個人の左翼的側面や奔放な人間性の是非に焦点が合っている。

結果的にオッペンハイマーがパンドラの箱を開けたゲームチェンジャーになってはいるけど、彼がそれを拒否していてもどのみち他の誰か(アメリカではないかもしれないけども)が同じ事を成していたのは明らか。その役目を引き受けたオッペンハイマーがどういう人間だったのか…、それが語られている作品だった。
そして原作者のカイ・バードとマーティン・J・シャーウィンやそれを映画化したクリストファー・ノーランもそれを描く役目を引き受けたと言える。

ストローズの公聴会周りのシーンをモノクロで描くのは、時系列の交通整理としてうまいと思う。アレだけでだいぶ見やすくわかりやすかった。

副読本的にアマプラにある『本物のオッペンハイマー』というドキュメンタリーも観たんだけど、コレがもう字幕が酷い。自動翻訳な文章はまだ我慢できるレベルなんだけど、そのわかりづらい字幕が一瞬で消えてほとんど読めない仕様…。
映画を観てからなら字幕の断片でもまぁ完走する事は可。でも特に映画以上の事は語られず目が疲れるだけなのでオススメはしません。
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