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アイアンクローのhi1oakiのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
3.8
ブッチャーとかファンクス、ジェットシンはもちろん、リック・フレアーとかハーリー・レイス、ビル・ロビンソンにジミー・スヌーカ、そんなレスラー達が来日して興行に参加していた時代。プロレスがテレビのゴールデンタイムに放送されていた時代。見てたなぁ。

悲劇的なシーンを盛り上げず、そこはスクリーンの外の行間で描き、残されたものの苦悩や戸惑いにフォーカスしているからこそ観ているものに強烈な“呪い”を感じさせる。
結局のところそのフォン・エリック家の“呪い”って家父長制やドラッグ、あるいはプロレスをやっていることそのものだったりするわけだけど、そこから逃れる術を知らないのだからある意味やはり“呪い”なのでしょう。
ケビンの息子2人もプロレスラーになってるんだよね…。

プロレス映画の面白さはプロレスが格闘スポーツであると同時にショーでもあるという曖昧さによって生まれる奥深さにあると思う。
“チャンピオンになる!”という言葉が所謂他のスポーツとは意味合いが違って、(ヤラセとか八百長とかいう安易な事ではない)ショーマンシップやストーリーテリングの才能も含むエンタメのショーレースに寄った複雑なものでもある。

実際のフォン・エリック一家にはもう1人末の息子クリスがいて、彼も自殺してしまったんだけどこの作品では映画的な繰り返しを避けるため省略されてしまっているのが残念。
ケビンやその息子達が「自分たち家族の映画だ」と観た時にこの不完全な伝記をどう思うのだろうか。
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