安堵霊タラコフスキー

ハッピーエンドの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

ハッピーエンド(2017年製作の映画)
4.5
構図や演出が静謐で素晴らしいはずなのに居心地が悪く、映像を見たいのに直視し難いこの感じ、まごう事なきハネケの作品だった。

カンヌだけでなく世界中で高い評価を受けた前の二作は、確かに素晴らしい作品であったもののハネケ以上に彼が影響を受けたであろうベルイマンやブレッソン的な要素が強い印象だったが、今作はコードアンノウンや隠された記憶のように不気味な作品となっていたので懐かしい気持ちになった。

具体的に言えば底意地の悪そうな映像媒体の使い方や脈絡を不親切に無視したジャンプカット、そして嵐の前のように静かで綺麗だからこそ突如として悍ましい光景に変貌しそうな映像等がハネケらしいと個人的に思う点なのだけど、蓋を開けてみれば過去作より血生臭くなくてマイルドだったとはいえ見ている間は前述の演出で背中が冷えて堪らなかった。

ということでハネケファンとしては十分に楽しめる作品になってはいたけれども、評価が高かった前の二作みたいな作品を期待していたら肩透かしを食らう気持ちも分かるし、パルムドールを受賞するような作品でもないしグランプリや監督賞でもハネケには今更感があるから、カンヌで無冠に終わる等評判が奮わなかった理由もわかるが、元々ハネケの作品は好みが分かれるものだったからそれでいいのかもしれない。