けまろう

ハッピーエンドのけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

ハッピーエンド(2017年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

『ハッピーエンド』鑑賞。パルムドール受賞作『アムール』に続くハネケ監督の新作。前作同様「愛と死」に対する深い考察が伺える展開だ。裏のテーマに移民問題を据え、移民問題を象徴する街カレーを舞台てしたりモロッコの使用人や街を闊歩する黒人たちなど社会的な側面も確かにあるのだが、個人的には愛と死のテーマをより強く感じた。
先ず、引っかかるのは映画の冒頭に映し出されるスマートフォンの動画だ。縦長の映像という異物感にまず目を奪われる。そして、その縦長の映像は最後に再び現れる。総括型の映画だった。スマートフォンで撮影しているのは、物語の主役でもある少女エヴ。デバイス越しという現実の世界から距離を置いている彼女の心理を代弁する表現だ。母子家庭で育てられたエヴは鬱に苛まれる母親の毒殺を企て、実父トマの実家であるロラン家に引き取られる。ロラン家はマフィアカンパニーの創始者で、カレーのブルジョワジーとして裕福に暮らしていた。そこでエヴが出会った祖父ジョルジュとの交流が肝。決して互いに好意を持っているわけではないが惹かれ合っていく。それは、互いに愛と死に関する秘密を持っていたからだ。ジョルジュも嘗て愛していた妻が病床に臥せった際手にかけていたのだ。苦しみながら生き続ける愛する人を殺すことの是非について。これは前作の『アムール』にも通じるテーマだ。
二人の違いは自己を苛むか苛まないか。エヴは自殺未遂を図ったが、ジョルジュは後悔していないと語る。しかし、最後自ら海に入っていったのはどういう心境からだったのだろう。また、心を通わせたかに見えたエヴもスマートフォン越しに祖父の入水を眺めており、彼女の世界の窓は広がらなかったのか。或いは祖父の死で再び閉じると察したのだろうか。
イザベル・ユペールの演技今回初めて好きだったかも。
けまろう

けまろう