satoshi

キングスマン:ゴールデン・サークルのsatoshiのレビュー・感想・評価

3.9
 現代版「007」として世界中で大ヒットした『キングスマン』の続編。前作のような悪趣味かつ、キレッキレのアクションを楽しみにして鑑賞しました。確かに、アクションはキレッキレでした。しかし、前作と比べると若干のパワーダウンは否めない作品でした。まぁ、それでも面白かったかといえば面白かったわけですが。

 前作は、エグジーが「キングスマン」になる過程を描く「オリジン」ものでした。故に、前半は寮ものともいえる訓練シーンがありました。しかし、本作では彼は既にキングスマン。なので、最初からプリンスの「LET'S GO CRAZY」をBGMにした、文字通りのアクセル全開のカーチェイスシーンが繰り広げられます。ここでテンションがガン上りです。

 また、アメリカを小バカにした設定も健在。本作の敵ポピーはアメリカの良妻賢母的です。そんな彼女がヘマを犯した部下をミンチにして、それをもとに人肉ハンバーガーを出すシーンは悪趣味極まりない。しかも、「美味しい?」とか聞くもんだから余計始末におえん。監督のマシュー・ヴォーン曰く、彼女は「間違ったアメリカのスウィート・ハート」だそう。なるほど。

 しかも彼女が住むポピーランドは50年代のアメリカを再現したようです。そこで作られているのが麻薬だというのがまた何とも言えません。『ブレイキング・バッド』を見ていると、アメリカというのは、国民は結構な数の人間が麻薬に手を染めているらしいです。それは麻薬が合法になったからかもしれません。それ故か、本作に出てくる麻薬常習者は、ほとんど善良な人間として描かれます。

 そんな彼らを人質にポピーは政府を脅迫するのです。でもこの大統領がひどい男でして。これを聞いて「麻薬常習者を一掃できるじゃん!やった!」とか言うわけです。レーガンみたいだし、トランプっぽくもあります。

 そんな「間違ったアメリカのスウィート・ハート」と「ひどい大統領」に立ち向かうのが、ザ・イギリスな「キングスマン」とザ・アメリカな「ステイツマン」。ここにマシューヴォーンの歪んだ気持ちがある気がします。彼は(最近違うことが判明したそうですが)アメリカの俳優ロバート・ヴォーンとイギリス人女性の間の子どもとされていたそうです。だからこの構造なのかもしれません。

 激闘の末、エグジーは勝利を収めますが、同時に何もかも失くしてしまいます。しかし、エグジーの中には、英国紳士としての「精神」は残っています。その精神を以て、「キングスマン」を再建していくのでしょうね。前作と同じく、鏡を見るシーンを以て成長を実感させる演出はニクいです。

 ここまで肯定的に書きましたが、先にも書いたとおり、パワーダウンした気がするのも事実。まず、アクション。全体的に前作と比較すると、オーソドックスなものが多かったと思います。確かに前作のようなカメラワークのアクションはあります。ですが、協会の大殺戮シーンとか脳みそ大爆発とか、「不謹慎ながらも痛快なシーン」が無いんです。よく考えると、前作はR15指定だったのに、本作は全年齢対象なんですよね。だからかな。

 また、脳みそ大爆発でいえば、悪役の顛末も、拍子抜け過ぎます。「普通じゃん!」って感じです。

 ただ、ここは監督の「前作と同じことはしたくない」という気持ちから生まれたのかなと思います。確かに、冒頭のカーチェイスは素晴らしいと感じましたし。

 しかし、それを以てしても看過できないことがあります。そう、「あのキャラ」の裏切りです。唐突過ぎたし、何より、何故それを「彼」が見破れたか、が最後まで全く分からないのです。しかもそこまで悪いことしてないのに、ミンチはやりすぎでしょう。「細かいことは気にしない」ことが重要な本作ですが、これには突っ込まざるを得ません。

 このように、面白いのですが、少しパワーダウンしてしまったかなと思わせる作品でした。でも、好きなので甘めで。