Foufou

正しい日 間違えた日のFoufouのレビュー・感想・評価

正しい日 間違えた日(2015年製作の映画)
3.8
近所に美味い焼肉屋があって、焼き肉以上に家庭料理こそ絶品なのだが、マッコリの椀を重ねるうち、今夜はどうあっても韓国映画だねぇと家人とそんな話に。この店に来ると、必ず韓国映画が観たくなる。単純なものです。

人の飲み食いするところが猥雑に描かれた映画がいいとしばらくサブスクをサーフしてめぼしいものが見つからず、この際ホン・サンスに初挑戦するかとなり……。

「韓国のロメール」の異名をとるのらしいホン・サンス。こちとらロメール様様ですから、韓国のロメールなら是非観てみたいとは逆になかなかならない。まんまパクリだったら噴飯物だし、全然似てなかったらそれはそれでやるせないわけで、ちょっと観るのが怖い。

開始10分でかなり居心地が悪くなる。この調子のままなら早晩絶対に寝てしまう、なんだ、この中身のない対話は、ロメールの会話劇をなんと心得る、それになんだ、この素人じみたズームの多用は……とむずむずが止まらない。でもまあ、なんかあるでしょう、あるんでしょうよ、と信じて観続けていると、果たしてこれがあるんですねぇ。

前半の退屈さは「間違えた日」だから。あの退屈さあっての、後半の「正しい日」であります。チャンネルを変えずに耐えてよござんした。

小生のことはさておき、インテリ好みの映画ですね。主人公は映画監督だし。メタ構造も意識されている。それになんといっても、作品がそのままホン・サンスの映画論になっている。それ、本心? と正直わからないところが、人を食った演出とも言えますが。あるいは私小説作家風の作り手なのかもしれない。これ、監督の経験だろうよ、とところどころあからさまに透けて見える。しかも美化している。それをどう評価するか。

この作品のあとですか、監督と主演のキム・ミニとの不倫が本国で報じられて、女優のほうはそれなりの代償を払ったとか。不倫のどうでもよさは、このくらい距離があるとはっきりします。それよか、本作では不倫しないでよかった、となってるのが面白い。作話の天衣無縫ぶりは、キム・ギドクと一脈通じているかもしれない。

ロメールの影響は受けてるんでしょうけどね、それはホン・サンスに限らないことで。今泉力哉を和製ロメールなんて呼ぶ人もいないでしょう。ホン・サンスはホン・サンス。楽しみがまた増えました♪
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