垂直落下式サミング

劇場版 selector destructed WIXOSSの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

劇場版 selector destructed WIXOSS(2016年製作の映画)
3.4
selector spread WIXOSSの劇場版。
正直いってネタバレも何もないダイジェスト劇場映画だが、ダイナミックな新カット等が複数追加されており、テレビ版で敵として登場したイオナと主人公るう子の関係と彼女達のルリグであるタマとウリスの対比、そして新キャラの幸の過去に焦点を当てた映画になっている。基本的にはテレビシリーズで語られてきたことの短縮版だが、新しい発見もあるサービス精神に満ちた劇場版だった。
この作品の『魔法少女まどか☆マギカ』のようなダークファンタジー萌えアニメの世界観で『遊戯王』をやるという発想事態は斬新だと思う。しかし、このアニメだけではWIXOSSがどんな戦略性を持ったカードゲームなのか見えてこない。カードの販促作品なのだから、テレビ版の総集編として長編映画にするにしてもWIXOSSのゲーム性…もしくはキャラクターバトルとしての魅力こそ掘り下げるべき部分なのではないだろうか。女の子達がカードゲームで自らの命を秤に掛けるという絵面だけで面白いんだから、彼女達がなぜ戦うのかという心情描写なんて陳腐でも構わない。だから、もうちょっとこう…

「この布陣は突破できまい!貴様に勝利するこの愉悦の瞬間を待ちわびたぞ!ワハハハ!」
「甘いぜ!俺は対抗カードを場に出すぜ!」
「血迷ったか遊戯!そんな弱小モンスターに何ができる!ザコを蹴散らせ攻撃だ!」
「迂闊だったな海馬。コイツはこの局面を打破する隠された特殊効果を持つモンスターなのさ!」
「なにぃ!バカな効果モンスターだとぉ!?」
「クリボー機雷化!爆☆殺!!」

みたいな感じで、互いの手札・デッキ・場の状況やプレイヤー同士の攻防を分かりやすい形で状況説明してほしい。ハイテンションで乗り切るか、もしくは男塾の雷電みたいな技の概要やゲームの進行状況をスピーディーに解説してくれる知恵者キャラが一人くらいは居て欲しいですね。この映画単体ではTCGの醍醐味であるボードアドバンテージの駆け引きやリソース管理の重要性がわからないし、互いのLPゲージを表記しないのも大きなマイナスポイントだと思う。勝ち負けは数値的に可視化すべきだ。
少女たちが抱き合う百合シーンが大画面で観られたので概ね満足。シアター設備が良かっただけかもしれないけど音響は抜群にいいです。『ライアーゲーム』のような不穏なノイズが散りばめられたBGMとかが好きなら、あれをステレオサウンドの大音量で聴くのはヤバいかもしれない。