くりふ

ラーンジャナーのくりふのレビュー・感想・評価

ラーンジャナー(2013年製作の映画)
4.0
【澄んだ泥沼】

映画祭上映には行けず、結局レンタルしましたが…いやああぁ面白かった!小さな画面からもズドンと刺さってきました。

愛のグラデーションを甘口から激辛まで、ここまで細かく刻んで突きつけるか。それも複合的に。それでいて娯楽映画の枠を外していないのがスゴイ。

ダヌシュ演じる冴えない男が、後半みるみる、あることで成り上がりますが、その唐突ぶりと、最後の感動場面で、え、インドの病院ってそこまで入れるの??バリアフリー過ぎね!?…て辺りがシラケポイント。

どうにも冷めましたが、他は永遠というほど、引き込まれました。

宗教などの格差や差別から中々、一緒になれない男女の話で、物語に、特に新味はないのですが、人物表現の刻み方が他ではチョット見ないもので、そこまでやるか!え、そっち行くか!と先の予測がつきません。

たとえ残酷な悲劇で終わっても結果的に、人間という生き物の、心の豊かさを観客に刻んで来るのですね。だから後味が悪くとも、豊饒な体験が残ってしまうのでした。

愛は人を救わないが、愛に殉じることは愚かとも言えない…なんだか、その範疇について、ちょっとだけ想いを馳せてしまうのでした。

ダヌシュの頑固な薄味感が、嫌味なく嵌って飽きません。

相手役の美女ソーナムさんも、こういう小狡い女がよく嵌りますね。でも、彼女も心の処世術としてああしていた、という面が、ちゃんと伝わってきました。

物語の肝は、インドの説話をモチーフとしているようですが、この『ラーンジャナー』というタイトルにも、1人の女性をひたすら思い続ける男性、という言葉としての意味があるそうで。

インドらしき恋愛観から来ている濃厚さでしたが、日本でもこういう恋愛映画、つくってみるといいと思う。

<2022.3.10記>
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