MasaichiYaguchi

バーバリアンズ セルビアの若きまなざしのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.0
小さな会場で行われた試写会では映写装置の不具合で何度も映像がストップしたり、途中映像が飛んだりしたりして問題だらけだった。
本作品に登場する主人公の青年ルカをはじめとした若者たちも夫々問題を抱えて鬱屈している。
大人と子供の狭間にいる若者は、その年代特有の恋や友情、将来への不安で様々な悩みや葛藤を持っているが、本作に登場する若者たちはユーゴスラビア紛争やコソボ紛争を経て、混沌と疲弊を来した社会で青春を送っているので、その閉塞感からくる遣り切れなさは察するに余りある。
本作の弱冠33歳のイヴァン・イキッチ監督は、このようなセルビアの若者たちのリアルを活写する為、プロの俳優を使わず、現地の不良たちを起用してドキュメンタリータッチで描いていく。
仕事も人生の目標も無く、悪友たちとつるんで街を徘徊し、酒を飲んだり、クラブで踊ったり、ナンパに精を出したりと、彼らは刹那的に快楽を求めて生きている。
そして日頃の鬱憤は地元のサッカーチームへの応援や、コソボ独立へのデモで晴らす若者たち。
国も置かれている社会状況も、人種も言語も違うけれど、2020年の東京オリンピックで浮き足立ち、一見好況感溢れる日本の社会だけど、その中にいる若者たちもセルビアの若者たち同様に閉塞感を抱いているような気がする。