ブタブタ

マジカル・ガールのブタブタのネタバレレビュー・内容・結末

マジカル・ガール(2014年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

1人の少女をめぐる悲劇。
白血病で余命僅かの少女アリシアの為に始まった、周りの人間達の運命を狂わす愛と死と嘘と呪いのお話し。

「少女の無垢な願い」が「邪悪な別の何か」に変貌していく正に《ダークファンタジー》
超常現象は一切起きてないに関わらず其処には確実に「魔法」や「呪い」が存在している。

監督は日本通で様々な日本のモノが散りばめられた作品ですが、検索サイトが「Rampo」でエンディング曲は美輪明宏「黒蜥蜴のテーマ」のカバーと江戸川乱歩のファンとの事ですが、自分は寧ろ夢野久作の連作『少女地獄』を思わせるな~と感じました。

特にバルバラは『少女地獄・第1章:何でも無い』のヒロイン・姫草ユリ子の様な嘘吐きで破滅的な「歳をとった美少女」で
ダミアンに助けを求めるのも救って欲しいからではなくダミアンを落し入れ過去の復讐?やルイスをダミアンと一緒に纏めて始末が目的なのか、にも関わらず自分自身も生きたいとも助かりたいとも思っていない様に思えて全てに対し虚無的な諦観、皆を巻き込んでの心中にも思えます。

「魔法少女ユキコ」になりたいと言う娘アリシアの願いを叶える為に犯罪に手を染める父ルイスは死を間近にした愛する娘の為と言う事も勿論ですが、アリシアの為になら非道な事でも何でもする自分に自暴自棄的破滅的な生きる目的や喜びを見出してる様にも思えます。

バルバラもルイスに脅迫を受け金を工面する為に秘密クラブで残酷SMプレイに身を投じるのは不倫がバレるのが困る事よりも寧ろマゾヒズムや自傷行為の行き着く果ての様に思えます。

少女時代のバルバラと教師ダミアンの間に何があったのかは明らかにされませんが、恐らくダミアンは少女バルバラにとち狂ってその為に殺人にまで至った、10年以上たった今でもその気持ちは変わらずダミアンにとってはバルバラは少女の頃のままでダミアンもバルバラの呪いにずっと掛かってる状態なのでは。

何かダミアンのバルバラに対する気持ちは、いい歳をして秋葉原辺りのマイナーな地下アイドルに入れ上げてる中年のファンの様で、バルバラにもう会いたくない関わりたくないと言うのも、そういうモノからもう卒業したい、ファンを止めたいと必死に自分の気持ちから逃げようとしている様で哀れに思えます。

ダミアンがルイスを殺したのはルイスがバルバラにした事がレイプや暴力と言う異常な行為ではなく双方合意の「不倫」だったから、自分には決して手に入らないバルバラとあっさり寝たルイスに対して嫉妬や怒り、そして「羨ましい」と言う気持ちがあったからでは。
不倫の証拠である録音が入った携帯をバルバラに渡さない最後のあのくだりはダミアンのせめてもの抵抗と言うか、自分をこんなに好きにさせておいて何も見返りをよこさないバルバラに対するささやかな復讐なんでしょうね。

クライマックスで『春はsa-ra sa-ra』をバックにユキコのドレスを着てステッキを構えたアリシアの姿はコスプレをした可愛い女の子のそれでは既に無く、其処に至る迄の地獄絵図、ルイスの無念の死バルバラの呪いダミアンの歪んだ愛情その全ての果てに顕現したある種の「魔物」で『リング』のTVから出てくる貞子『SWエピソード3』のダース・ベイダーの誕生の様に禍々しい怪物にも見えました。

そして何よりダミアンに少しも怯まずキッと睨みつけるアリシアの姿はカッコいい。
監督はインタビューで『魔法少女まどか☆マギカ』の影響も語っている様ですが『まどか』の魔法少女達がその過酷な運命に対しけっして怯まず挑み、そして散っていった様に魔法少女のドレスを纏ったアリシアも死が間近に迫った己の運命に対して目を逸らさずに、恐らくアリシアにとっては突然家に入って来た男(ダミアン)は強盗でも自分を殺しに来た魔法少女の敵か何かでもたいした違いはなかった筈。
やって来たダミアンに対峙している自分の姿はアリシアにとってアニメの中の魔法少女そのままで、確かにあの瞬間アリシアは魔法少女に変身したのであり、たった1人で過酷で残酷な現実の世界に挑むべく対峙していたのだと思います。

それから、ダミアンは撃つ瞬間目を逸らしていたので弾は当たってない説を自分は支持したいですが。
ブタブタ

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