アリスinムビチケ図鑑

ナチス第三の男のアリスinムビチケ図鑑のレビュー・感想・評価

ナチス第三の男(2017年製作の映画)
3.7
ナチス第3の男と言われた冷徹極まるラインハルトが、その地位に上り詰める迄と、
それを暗殺しようと企だてたスパイ達のストーリーを2部編成にして映し出した物語です。

ラインハルト側からだけでは無く、
逆サイドに視点を移す事によって、より深みも増し、
一方通行の平面的な見方では無く、
起承転結のしっかりとした立体的な表現が斬新で面白くもあります。

海軍通信将校をしていたラインハルトは、女性問題から失墜し、
その後ナチ党の強かな女性リナと運命の出会いをします。

リナに導かれるままナチスの党員となり、
ヒムラーとの出会いから情報局SS(ナチ党親衛隊)を共に作り育てて行きます。
そこで、持って生まれた冷徹さと残虐性を思う存分発揮して、ヒトラー、ヒムラーに次ぐ第3の存在に迄上り詰めます。

当時のヒトラー、ナチスに対してドイツ国民がいかに純粋に輝かしい未来を重ねて見ていたかがパレードのシーンからも垣間見ることが出来ました。

第2幕では、ラインハルト、ナチス側から、レジスタンス・スパイ側へと視点が移ります。

ラインハルトに酷く苦しめられて来たチェコスロバキア亡命政府の命を受け、
ヤンとヨゼフ、二人の若きチェコ軍人は、
ラインハルト殺害計画実行の為にドイツへと送り込まれます。

そこで出会う協力者の女性アンナとヤンは同じ志を持つ同志であり、その情熱故に恋に落ちる事になります。

またレジスタンスの人々の協力を受け、二人はラインハルトの暗殺を虎視眈々と狙います。

そして遂に計画実行の時が近付き、新たなる歴史の針が動き出します。


後半の暗殺計画のストーリーは、過去に何度か映画化されていて、
その内容としては多少あっさりとはしているものの、
ラインハルトのストーリーと組み合わせた2部編成が作り手の冒険的な試みに思え、
その目新しさにハッとしました。

非常な迄の殺戮、無残な死を遂げる人々の無念さに、
ナチスやラインハルトの残忍性を目の当たりにした様で心が痛くなる感覚を覚えます。

戦争が人を狂わせるのか、
傲慢な人の心が戦争を呼び起こすのか、
一部の人間に狂わされた歴史のうねりに巻き込まれた人々の無念さを忘れない様に、
過去に学ぶ事は大切だと思います。

戦争の歴史を繰り返さない為にも、
史実に基づく映画が数多く作られ、
またそれを観て思い出す事も必要なんだと思いました。