男女の結婚観、あるいは恋愛観の埋められない溝と決定的な違いを長年連れ添った夫婦を通して描いたドラマ作品。
ある土曜日に結婚45周年の記念パーティーを控えるジェフとケイト。しかし、月曜日にある手紙が届いた事で、彼らの土曜日までの6日間はは、45年の関係を大きく揺るがしていく。
山岳事故で死んでしまったかつての夫の恋人の揺るぎない存在が、突如として夫婦の関係に入り込んだ時、夫は過去の恋愛の記憶を日毎に蘇生させ、妻は存在しない女への嫉妬心を夜毎重ねていく。
それはやがて、夫へのぬぐい切れない不信感へと肥大していくのだった…。
夫婦が重ねた45年とは一体何だったのか？
長い年月は互いの不信や嫉妬の感情を乗り越える事は出来ないのか？…
『夫は過去の想いに酔いしれ、妻の心は感情の揺さぶりにより、さいなまれてゆく…。』
知人からも慕われ仲睦まじい夫婦像で、45年という長い期間をかけて育んできた夫婦愛が、ある出来事で不確かなものへと変化していく。
作品はとても丁寧な演出が施されており、小さな溝がなんとも言えない緊張感と共に次第に大きくなっていきます。長年連れ添っても尚旦那の知らない過去があり、秘められた想いは想像もしていなかった感情を生んでしまうのです。
言葉なき不安の行動は、穏やかな夫婦生活からは予想もつかない方向へ向かい、心の動揺が手に取る様に分かるでしょう。
事が上手く運んでいる時には、平穏と安らぎをもたらし、その逆は水の泡の如く雑音をたて消えてしまう。「さざなみ」に似た不協和音が、心の不安と動揺を胸の奥底で騒めき、許容範囲内に収まらない心情が上手く表現された作品でした。
