当時全米を賑わせたお騒がせ殺人犯ゲイリー・ギルモア事件を参考にジョストが撮った"イカれた青年が人を殺すまで"ものである。彼は死刑制度反対に傾いていたアメリカで積極的に死刑を望み、死刑にされる権利を勝ち取った殺人犯なのだ、本当にインスピレーションの発端だけっぽいのは内容からも明白。インディーズ系映画が90年代に漸く興味を示した殺人犯の物語(『ヘンリー ある連続殺人鬼の記録』『ありふれた事件」)や巧妙で印象的なサントラ(『レザボア・ドッグス』)などを15年近く先駆けてやっているくせに全く有名でないというのが面白い。ちなみに、主演のトム・ブレアの名を冠した"トム・ブレア三部作"の第一篇であり『Sure Fire』『The Bed You Sleep In』と続くという。通に言わせれば『The Bed You Sleep In』が一番面白いらしい。もう一つ、本作品は2000ドルで製作されたらしい。
『Last Chants for a Slow Dance』は本書に言わせれば、「ポール・シュレイダーの『ライト・スリーパー』(1991)や、ポール・トーマス・アンダーソンやロッジ・ケリガンの作品よりも遥か昔に、本作品は存在した。」とのこと。この超インディーズ映画にアンダーソンの面影を感じることができると聞いて、長らく探していたのですがDVD化もまともに行われておらずほとんど観ることのできない作品でした。しかし、有識者曰くVimeoで配信し始めたとの情報を受け、調べてみたら本当に1600円程でレンタルできるようだ。ってわけで観てみました。