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『ラスト・チャンツ・フォー・ア・スロー・ダンス(原題)』に投稿された感想・評価

No.643[我々は目撃者か共犯者か] 99点(OoC)

当時全米を賑わせたお騒がせ殺人犯ゲイリー・ギルモア事件を参考にジョストが撮った"イカれた青年が人を殺すまで"ものである。彼は死刑制度反対に傾いていたアメリカで積極的に死刑を望み、死刑にされる権利を勝ち取った殺人犯なのだ、本当にインスピレーションの発端だけっぽいのは内容からも明白。インディーズ系映画が90年代に漸く興味を示した殺人犯の物語(『ヘンリー ある連続殺人鬼の記録』『ありふれた事件」)や巧妙で印象的なサントラ(『レザボア・ドッグス』)などを15年近く先駆けてやっているくせに全く有名でないというのが面白い。ちなみに、主演のトム・ブレアの名を冠した"トム・ブレア三部作"の第一篇であり『Sure Fire』『The Bed You Sleep In』と続くという。通に言わせれば『The Bed You Sleep In』が一番面白いらしい。もう一つ、本作品は2000ドルで製作されたらしい。

本作品は印象的な長回しを中心に構成されている。例えば、冒頭の車での対話では、決して相乗りしたくないタイプの罵詈雑言を虚空に投げ続ける主人公トムを映し続け、種明かしのようにカメラが引くと隣には青年が乗っているのだ。彼を降ろした後の道路を延々写した冒頭の長回しが白眉。鏡越しの夫婦喧嘩のシーンでは画面構成が上手いのは勿論のこと、妻は妊娠していることや夫が働かないことに対して怒り狂っているが決して夫の目を直接見なかったのに最後クルッと振り返って場面が切り替わるのが中々秀逸。最も有名な長回しは、トムが延々と指名手配犯の特徴を読み上げるシーンだろう。シンプルに意味不明だが驚異的なパワーを秘めている。

ダイナーやモーテルを徘徊するトムは陰謀論おじさんに絡まれたり、人妻をナンパしたりして暇を潰している。これらの長回しも興味深いが、唐突にモノクロになった画面にネオンサインやテレビだけがカラーになっているのは、アメリカに巣食う堕落の象徴というか、どこかトムのつまらない人生を構成する新時代の"つまらない"消費物の集合体のようで滑稽だ。

当て所ない放浪を続けたトムは、唐突に男を射殺する。トムはカメラクルーに話しかけていることから本作品が『ありふれた事件』のような疑似ドキュメンタリーとして、我々まで共犯にしたてあげようとしていることが伺える。我々は目撃者なのか共犯者なのか。逃げ去るトムの重なるように"DEAD END"という字幕。行き止まり。さようなら。

全体として金の掛かった超絶技巧は一つもないが、これら多くの長回しが印象的で、病める若者の肖像や唐突の殺人なんかは上に挙げた作品に代表される90年代以降の演出が激烈なものになったインディーズ系映画に先駆ける作品となっている。70年代的なフィルムの発色がどうしようもない中西部の荒涼感を上手く表してる。また、ジョスト自身が作詞作曲し歌っているカントリーソングが最高にキマっている。長回しの繋ぎを担ってるんだけど、どうも内容とシンクロしているようで聞き惚れてしまった。サントラ超欲しい。
4.3
【太陽が眩しかったから】
『死ぬまでに観たい映画1001本』には、観賞困難作、「誰だお前は?」となる作品が結構あるのですがその中でも謎レベルが高い作品がある。

『Last Chants for a Slow Dance』は本書に言わせれば、「ポール・シュレイダーの『ライト・スリーパー』(1991)や、ポール・トーマス・アンダーソンやロッジ・ケリガンの作品よりも遥か昔に、本作品は存在した。」とのこと。この超インディーズ映画にアンダーソンの面影を感じることができると聞いて、長らく探していたのですがDVD化もまともに行われておらずほとんど観ることのできない作品でした。しかし、有識者曰くVimeoで配信し始めたとの情報を受け、調べてみたら本当に1600円程でレンタルできるようだ。ってわけで観てみました。

2020年の文脈で描くのであれば、「グランド・セフト・オートシリーズやラース・フォン・トリアーの『ハウス・ジャック・ビルト』(2018)よりも遥か昔に、本作品は存在した。」となるだろう。

延々とハイウェイを爆走する車の轍を捉える。おっさんが大声でぶつくさ文句を言っている。その声の大きさの異様さから、この男のクレイジーさを感じ取る。そして長い長い太陽燦々逆光で照らされる車は突然パンをし、寡黙な男に向かって、もとい会話のドッヂボールですらない明後日の方向へ言葉を投げつけていることが判明する。終いには、寡黙な男を路上に放置して去っていってしまう。

彼は妻がいるのだが、彼女のことはどうでもよくて家出しているのだ。金なし、職なし、そして子供を欲しがらない。アメリカ社会の理想家庭である、妻がいてお金も仕事もあっての生活からRUN AWAYしているのだ。そんな彼は味わい深いカントリーソングをバックに、ただひたすらバーやダイナーを巡り、人生という長い時間を潰している。1960年代、大人の作った社会に反発するようにヒッピーカルチャーが登場したが、そんなカルチャーも1969年のウッドストックを皮切りに終焉に向かった。もはや時代遅れになりつつあるライフスタイルにおっさんはしがみつき、逆光の恍惚の中、虚無の青春を謳歌するのだ。

そしてそんな男は唐突な殺人を行い映画が終わる。

なぜ?

と掘り下げても、

「太陽が眩しかったから」

と言った回答しか得られないような唐突さに唖然とさせられる。

まさしくこの映画の副題にもなっている《DEAD END》を象徴させているのだ。

これは人生に行き詰まった男の鎮魂歌であり讃美歌である。人生の終着点における最後の輝きと、滅亡が驚くほどに美しいショットの中で封じ込められた傑作なのだ。

ジョン・ジョストの鋭いアメリカ社会の洞察は『The Bed You Sleep In』でも顕著だとのこと。《アメリカン・ドリーム》を批判した『The Bed You Sleep In』は今後観てみたい作品である。