スズタカ

ハドソン川の奇跡のスズタカのレビュー・感想・評価

ハドソン川の奇跡(2016年製作の映画)
3.8
原題は、主人公であるサレンバーガー機長のニックネーム[Sully]

邦題は[ハドソン川の奇跡]…って、これでは、ダメなのでは…(^_^;)

何故なら、実際に起こった信じられない様な航空機事故の生還劇が、奇跡ではなかったことが、描かれているからです。

描き方の視点も面白く、普通、生還劇をクライマックスに持ってきそうなのにそれをせず、サブストーリー的な扱いにして、事故後から始まり、中心として描いているのは、あくまで、サレンバーガー機長自身のこと。

40年以上、航空機の操縦に真摯に向かい合ってきたプロフェッショナルな男の姿。

航空機のことなら、隅から隅まで全部分かっているであろう、信頼に足る、その実力。

観ているうちに、今回の生還劇が、機長が可能性にかけたとか、奇跡とかマグレとかの類いではなく、ハドソン川への不時着が、唯一であり、最良の選択であったことが解ります。

この映画の何が素晴らしいって、多くの人が、そのまま自分自身に置き換えられるところじゃないかと思います。

常日頃の努力が、こういう土壇場で試される…。厳しいし、怖いよね。

もし、自分の仕事において、不測の事態が起こった時に、今回の機長の様に、最良の選択が出来る実力と判断力を持つためには、常に自分の仕事に全力で臨むしかない。

仕事って、そういうものだと再認識させてくれました。

イーストウッド監督の、リアルさを保ちつつ、その範疇で限界までエンターテイメント度を高めているのに、派手さを抑えた演出も、相変わらず上手いなと思いました。

余談ですが、今回のトム・ハンクスは、表情から演技まで、クリント・イーストウッド監督を模写している様に見えましたが…いかがでしょう。

トム・ハンクスは、イーストウッド監督が、映画界における自分の姿を機長に重ねていると理解して、イーストウッドに成り代わって演じたのかな…なんて、勝手な想像ですが、そんなところも、俺には胸熱でした。
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