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アノマリサのcoのレビュー・感想・評価

アノマリサ(2015年製作の映画)
4.3
奇想天外なストーリーでおなじみの脚本家カウフマンの作品。
もれなくこちらもとても変わったストーリーだった。
なにも知らず見始めたらストップモーションアニメ。しかも人形の顔には変な線が入ったままなのに、動きとか表情はとても繊細でリアルという奇妙なチグハグさ。
人形だけど可愛さは微塵もなく主人公は中年の男性だし主人公以外は同じ顔で同じ声でそれがさらに薄気味悪い。
何ヶ月もかけて丁寧に撮影したというとあるシーンは、マルコビッチの穴の冒頭での人形劇のシーンを思い出した。人形劇なのに大人向け。カウフマンらしい奇妙なチグハグさがうかがえる。

カウフマンが描く主人公は暗い(笑)
この主人公もやはりそうだ。
誰と何を話していてもつまらなそう。しんどそう。会話が全く続かない。
自分以外の人が同じ声同じ顔なのに辟易しているようだ。
そんな中出会う一人だけ声が違う女性。
今までは誰と話しても興味もなくすぐ会話を終わらせてしまうのにこの女性の話だけはいくらでもずっと聞いていたい。
まさにリサだけは他の人と違う。自分と彼女はだけは特別。そう思っていた。会って次の日の朝食に妻子ある身でプロポーズ。しかしその直後彼女が食べながらフォークをかじった事にがっかりする。相手の粗が見えるようになった途端、他の人と同じ男の声に聞こえるようになり落胆する主人公。
その後主人公が講演会で話す。お客様もあなたと同じ人間なのだから優しく接しなさい。電話口で見えなくても笑顔は伝わるものですと。まさにブーメラン。主人公は笑顔になってみせるけど普段笑顔なんてし慣れてないから気持ち悪い(笑)主人公はどんどん壊れていく。
結局彼女を置いて家に帰る主人公。お土産に持ち帰った日本人形の声が他の人と違う綺麗な女性の声に聞こえて落胆するのだった。
でも皮肉な事に自分だって本当は人形なんだけどね。

リサのラストシーンは少しわかりづらいけどきっとこういう人の方が幸せになれるって事なのかなって解釈した。
不幸になるのも幸せになるのも自分の気持ち次第。相手に求めるのではなくて自分がどう思うか次第。
アダプテーションでもそんな事を言ってたっけな。

奇想天外なストーリーとメッセージが惹きつけられるカウフマンの脚本は今回も健在でした。
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