にこ

リップヴァンウィンクルの花嫁のにこのレビュー・感想・評価

4.5
念願の岩井俊二劇場観賞。
岩井俊二大好きとか、中二病爆発してますが、この独特の綿毛のような浮遊感がありながら、ナイフのように鋭く切りつけられるような作風は他では味わえないんですよ。

黒木華を最初に認識したのがドラマまほろ駅前多田便利軒でのある話で出てきた彼女はマシンガントークでかなりグイグイくる異質なやばい女役。
本作のような弱々しい頼りないキャラがこんなにもハマる人だとははじめはわからなかったな。
というか、黒木華なんだけど、なんら違和感がなく、そのキャラクターを演じてしまう演技力の高さなのだろうな。

そして脇を固める綾野剛、Coccoもはまり役で、うん。とてもよかった。

この映画がどんな映画かときかれると、なんといっていいのか私の言葉のボキャブラリーでは言い表せないので困ってしまうのだけど、ファンタジーのようなリアルのような、嘘ばかりで嘘に絶望させられながら、嘘に救われて、流されて流されて話しが進むように七海も騙されて流されて流されていく。なのにエンドロールでは物語の始まりの頃の七海はいなくって。

「この世界は幸せで溢れている」

そんなきれいな言葉なのに、含まれているニュアンスはとても苦しくなる言葉で、それを語るCoccoに思わず涙がこぼれてしまいました……

三時間という長丁場なのだが、眠気なんて出てくる余地がないほど世界に没頭させられました。
随所で流れるクラシックBGMが頭に鳴り響くもんで、こういう音をいれるタイミングや選曲はさすが岩井俊二、と思いますね。

見終わったあとの、とても心地良い余韻に浸っていたというのに、相方が仕事やめるとか言い出してて一気に現実に引き戻されたエイプリルフールの一本でした。
人を困らせるような嘘はやめましょう。
にこ

にこ