スズタカ

リップヴァンウィンクルの花嫁のスズタカのレビュー・感想・評価

4.9
岩井俊二は、特別だ。

あの頃、夢中になって全ての作品を観た。

中でも、"打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?"は、今でも、俺の心の中にずっとある、とても大切な作品です。

だけど、岩井さんの近年の活動には、どうしちゃったのかなと思っていたし、はっきり好きじゃなかったんだけど……!ど!!どどど!!!

キ!キキ、キターーーッ!!この映画、超・大大大傑作でしたーーッ!!!

岩井さん、やっぱり凄いんじゃん!これだよ、これを待ってたんですよ!巷に溢れる邦画とは格が違う!!

どこからどこまでも、岩井さんらしいのだけれど、その全てが素晴らしい。

まず、映像美。こんなに美しい映像作品は、これまで見たことがない。それは、デジタルでいじくり回して加工したような、嘘の美しさじゃない。一線を画した素晴らしさ。美しいって、こういう事だよ。

演出も、岩井さん独特の、芸術性と庶民的というか下世話感とのバランスが絶妙です。

ストーリーや語り口も好き。

主人公は、あくまで普通の人。普通に暮らしているだけなんだけど、いくら自分が悪いことをしていなくたって、色んなことは起こる。生きていくって、ままならない。

だけど、それまでの日常から視点が外れた途端、毎日が慌ただしくもキラキラと彩られていく。

ただ、それは以前の自分には見えていなかった、気付けていなかっただけで、常に周りにいっぱいあったこと。そんなことを描いている、と俺は感じました。

キャストの演技も凄かったぁ〜。黒木華さんとCOCCOさんは、劇中の人物そのものとしてそこに存在しているし、何よりその魅力に圧倒されました。

綾野剛さんを始め、2人を取り巻く皆さんも多少ステレオタイプではあるけど、それも狙いですね、素晴らしかったです。

3時間と長尺ですが、無駄なシーンなど無く、その時間自体もメッセージです。

ぜひ、多くの皆さんに映画館のスクリーンで観て欲しい。

きっと、人生の大切な映画になるよ。
スズタカ

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