豚肉丸

アラビアン・ナイト 第1部 休息のない人々の豚肉丸のレビュー・感想・評価

4.3
現代のポルトガルの政治状況を絡めながら千夜一夜物語のような構成でおとぎ話が語られるお話

造船場の閉鎖や労働者のリストラ、スズメバチの被害などの現在のポルトガルの様子をドキュメンタリーのように描いた後、突然本編に移行する。「この映画は構成以外千夜一夜物語をモチーフにしてないよ!」みたいなテロップが表す通り、本作は「少女が毎晩物語を語る」という導入を用いてポルトガルの政治批判を絡めた寓話を生み出そうとしたかなり実験的な作りの映画であった。

3話ともテーマがユーモラスで面白い。勃起不全の政治家、夜中に鳴く煩い鶏、動物語を解読できる裁判官、水泳にこだわる男、そして鯨の爆発などの人物造形や描写が非常にシュール。
何と言うか、どこかズレた感じが生み出すユーモアが根底にある感じ。それが特に光るのが二話目の鶏が裁判にかけられるおとぎ話で、クソみたいな男女の三角関係話を子供達に演じさせることで寓話的に見せる演出がかなり良かった。
政治批判が根底にあるものの物語は全体を通して奇怪な雰囲気となっており、けれど突然失業者へのインタビュー映像が挟まったりと、フィクションと現実が混ざりあって不思議な感覚を覚えさせてくるのは流石ミゲル・ゴメス監督と言った感じ。
ただ、これってあと二作もあるのか。このテンポ感であと二作は少し疲れそうな...
豚肉丸

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