ちろる

凱里ブルースのちろるのレビュー・感想・評価

凱里ブルース(2015年製作の映画)
3.8
かつてチンピラだったチェンが刑期を終えると妻は消え、可愛がっていた甥っ子ウェイウェイも弟が何処かへ行かせてしまった。
霧がかったような湿った空気が伝わってくる凱里にあるとある小さな診療所でひっそりと暮らす男は居場所を無くしかけていた。
野人の存在に怯える街の人々。
白昼夢のような男の心象世界は、曇った街の景色をさらにぼやけさせる。

身を寄せる老婦人のかつての友人を見舞うため、そして亡くなった母親の願いを叶えるためチェンはトランクひとつで鎮遠に向かうのだが・・・
ダンマイという見知らぬ街にたどり着くのだが、まるで時空が歪んだような不思議な体験をする。
出逢う人は見知らぬ存在なのに、どこか懐かしいのはなぜなのだろう?
トラックやバイクに乗る長回しを観ているとまるで瞑想しているようになる。
不思議。

詩的で、すごく抽象的な言葉も出てくるけれど、多分その一つ一つを理解しようとしなくていい。
ストーリーはあってないようなものだから、
ただ、この目眩く映像に身を委ねて、チェンと共に夢幻の記憶の旅をしてみよう。
ビー・ガン監督こちらを作ったのが若干26歳。
またまた恐ろしい天才が現れた気がしました。
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