爆裂BOX

マザーハウス 恐怖の使者の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

マザーハウス 恐怖の使者(2013年製作の映画)
4.2
1981年のベネズエラ、失業中の夫と二人の息子と暮らしていたドゥルセ。11月11日、次男が事故死し、その葬儀が行われた深夜、夫が殺され仲南も忽然と姿を消してしまう…というストーリー。
珍しいベネズエラ産のオカルトホラーです。
夫と長男殺害容疑で終身刑になったドゥルセは、30年後、高齢になった事で特別制度として自宅での軟禁になり30年ぶりに自宅に帰ってきますが、やがて不思議な現象が起き始めるという内容ですが、このタイトルとジャケからありきたりでくだらないB級幽霊屋敷物思わせますが(そういうのも嫌いじゃないけど)、実に緻密に練られた脚本と演出で描かれた物語でした。
構成としては終身刑で服役する前と後の物語が交互に描かれていきますが、服役する前の話では母と子の前に謎の人影や姿が現れたりする幽霊屋敷ものっぽい感じで進みます。長男はその人物の顔を見てるけど頑なに話そうとせず、「弟と遊んではいけない」というメッセージやその人物から渡されたメモを主人公である母親に渡したりして、ヒトコワものかもしれないという要素も感じさせますね。ただ、恐怖シーンや演出はあんまりなくて、主人公と失業中の夫のギスギスした関係や、息子たちと友人達との交流などのドラマ部分が多めで、ちょっと冗長に感じる人はいるかもしれませんね。個人的には兄弟と友人達がイタズラしたり(結構悪質)、野球したり、兄弟二人とも好きな女の子との関係などジュブナイル感溢れるシーンは好きでした。
主人公が霊媒師に頼る展開も幽霊屋敷物の常道という感じですが、ここでの霊媒師の言葉は終盤になると分かるけど助けになるものではなかったし役には立たなかったな。
服役後に帰って来てからも、包丁を持った老人の幽霊が主人公の前に現れて一体誰なのかと疑問を持たせる展開が進みます。家に訪ねてくる神父からこの家を建てた一家や家に住んだ代々の人たちが失踪している事実や11月11日11時11分11秒に何かが起きるという事を伝えられたりと謎が謎を呼ぶ展開ですね。
そして後半30分からは怒涛の超展開繰り広げられますが、ネタバレすると面白くないなタイプの作品でもあるので詳しくは言えないけど、前半でちりばめられた伏線が次々回収される手頃はパズルのピースがハマっていくスッキリ感を味わえますね。後半になるとホラーとは言えなくなるけど、「あのシーンはこういう事だったのか!」となる納得する気持ちよさの前にはどうでもよくなりますね。また、レオの言葉などで今迄住んでいた人たちが辿った末路やその人達がそういう決断するに至った経緯など想像を膨らませる事が出来るのも良いですね。結構時系列が入り乱れるというか同時になるというか混乱しそうだけど、登場人物の服装などで見分けがつくようにされてるのも良いですね。
ラストで明らかになるジンプの正体や登場する女性等ラストは本当にジンワリ涙が出てくる感動できる展開でした。重要なアイテムであるムーンストーンが人々の手を渡っていく所もなんか感動した。
冷静に考えると主人公旦那に酷い事してるし冷たすぎるし、旦那も最後あんな行動取ったとはいえ可哀想な気がするけど。
韓国で「時間回廊の殺人」のタイトルでリメイクされてるんですね。そちらも見て見たいですね(しかしタイトルネタバレすぎる)
このタイトルとジャケットからありがちなB級幽霊屋敷物と思ってたらいい意味で騙されること請け合いな傑作だと思います。この監督の次回作も見て見たいですね。