螢

ダンガル きっと、つよくなるの螢のレビュー・感想・評価

4.0
ものすごく胸が熱くなる作品でした。ずーと、ウルウルとハラハラを交互に繰り返しながら鑑賞終了。

インドのレスリング選手だったマハヴィル。生活のために選手を引退した彼は、息子が産まれたら、国際大会で金メダルを獲らすと意気込んでいた。それなのに、産まれたのは女四人ばかり。
すっかり落胆し、夢を諦めていた彼だけど、長女ギータと次女バビータが男の子をボコボコにするほどの格闘センスを持っていることを知り、二人をレスリング選手にするために猛特訓を始める。

男尊女卑が根強く残る閉鎖的な村では、「女がレスリングをするなんて」と、親子は白い目で見られる。
あまりに厳しい特訓と、周囲の好奇と嘲笑の目から、最初はイヤイヤ練習をしていた二人。
けれど、古い慣習どおり見知らぬ男の元へ厄介払いのように14歳でお嫁に出される友達に、男の所有物として家事と育児をこなすだけではない、人生の選択肢があることの意味を教えられた二人は、一念発起する。
男の子を負かすことから始まり、長じて全国チャンピオンになり、国の代表に選ばれるまでに。
そして、父の手を離れる時が来たけど…。

少女らしいささやかな抵抗、無我夢中な姿、思うような結果が出ない時の苦しみ、父への反目、それでもやはり父を支えとする気持ち…。

本当に、必死に頑張っている二人の姿にウルウルしっぱなし。

そして、レスリング経験のある女性たちが演じたのかって思ってしまうぐらい、試合シーンの時の、闘志溢れる表情や、力強い動きがすごいです。子役・成人役の四人とも、役作りのために、未経験ながらものすごく特訓したのだとか。
巧みに切り替わるカメラアングルもいいし、2分×3ピリオドという試合の時間感覚の使い方もうまく、本当に、試合シーンは躍動感に満ちていて、ハラハラしっぱなしです。

そして、アーミル・カーン演じる、父マハヴィルの、横暴なようで、娘たちを守り、支えようとする、愛ある姿。

もう、本当に泣けます。

親子三人は、実在の人物をモデルにしているとのことで、エンドロールで流れる彼らの写真と綴られる成果に、これまた胸が熱くなります。

スポ根の王道な筋書きの中で、まだまだ男性とは平等とは言えない、女性の自由や立場にも切り込んだ、社会派的な側面もしっかりある、良くできた作品です。

観終わったばかりだけど、またすぐ観たくなりました。
螢