MasaichiYaguchi

ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.7
「英国王のスピーチ」にはもう一つのドラマがあった。
1945年5月8日、6年間続いた第二次世界大戦が終わったことを祝うヨーロッパ戦勝記念日のこの夜、父・国王ジョージ6世の許しを得たエリザベス王女とマーガレット王女が非公式の外出をしたことを、本作では実話を基にフィクションを交えて映画化している。
王女のお忍びの外出というと、「ローマの休日」を思い浮かべるが、本作はそのロンドン版と言えるかもしれない。
エリザベス女王は、今年生誕90周年を迎え、英国史上最高齢で最長在位の君主となった。
日本と同じく島国で、ロイヤルファミリーを戴く英国だが、何かとゴシップを含めて世界中で話題になることが多い、ある意味開かれた王室だと思う。
それにしても、いくら実話ベースとはいえ、この映画で描かれた内容を考えると、日本では決してこのような作品は作られないと思う。
日本の皇室は国民にとって閉ざされた存在だとは思わないが、犯し難い神聖な部分があると思う。
本作が、王妃の淡いラブロマンスを描いた「ローマの休日」と違う点は、終戦直後で街も人々も未だ傷癒えないなか、エリザベスがお忍びの外出を通し、そのような風景や人と接するうちに王室の一員として目覚めるところにあると思う。
このエリザベスを、「世界で最も美しい顔ベスト100」にランクインしているサラ・ガドンが気品ある美しさで凛として演じている。
英国の名所、バッキンガム宮殿、トラファルガー広場、テムズ川、ホテル・リッツ等を舞台に、郷愁を覚える「イン・ザ・ムード」、「タキシード・ジャンクション」の名曲に彩られながら、一人の女性が英国君主としての道を歩み始める姿が、青春の輝きと仄かな恋心と共に描かれて爽やかな余韻を残します。