アニマル泉

夜のストレンジャーのアニマル泉のレビュー・感想・評価

夜のストレンジャー(1944年製作の映画)
4.6
アンソニー・マンが初めて個性を出したと言われる初期の注目作。冒頭はアジア戦線。当時まだ太平洋戦争中なのに映画にしていることに驚く。そしていきなりの列車脱線事故が凄まじい。マンは座り芝居以外は長回しが多い。そしてメイン舞台の崖の上の屋敷になる。「高さ」のマンらしい設定だ。老婆ヘレン・ティミグの狂い方が素晴らしい。絶対服従でいつも怯えている老女中エディス・バレットもいい。屋敷のリビングには不在の娘の肖像画があり、階段を登ると娘の豪華な部屋がある。ウィリアム・テリーとヴァージニア・グレイが仲睦まじい姿をドアの隙間から覗くティミングごしバレット、ドアの隙間からティミングごしの見た目のテリーとグレイからティミングのアップ、恐ろしい端正で奥深い構図の切返しだ。階段も不気味だ。バレットがポストに手紙を密かに投函して階段を上がってくる、壁に落ちる月明かりのシルエットが不安を煽る、上りきって自室に入ると入れ違いに手前のドアが開き、ティミグの足と杖がインする、そしてティミグの影が階段を下りていく。サスペンス高まるショットだ。そしてティミグがカメラ前でミルクに毒をあおり、そのままバレットに飲ませる戦慄のワンカット。
「高さ」の主題は期待通り、ティミグが車と崖の柵に紐を張る、引っかかったテリーは崖からあわや墜落する。二人の叫び声で殺したと確信したティミグが警察に電話で通報する。逆光気味のティミグをローアングルのカチっとした構図で捕らえる、そして通報に夢中のティミグの奥からテリーとグレイが現れる。これで決まりの見事なワンショットだ。クライマックス、ティミグは娘の肖像画の前で真相を告白する。「私が娘を創った」狂っている。カメラは肖像画とティミグからトラックインして歓喜の涙のアップになって叫ぶ。「私の心を愛してくれた」悪夢のワンカットだ。そして肖像画が落下する。リパブリック。画質が良かった。
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