えんさん

真田十勇士のえんさんのレビュー・感想・評価

真田十勇士(2016年製作の映画)
3.5

関ヶ原の戦いから10年以上経ち、徳川家康による天下統一はほぼ目前まで迫っていた。大阪城で、亡き秀吉の遺児・秀頼と、その母・淀殿は豊臣家の復興を模索すべく、家康に対して反旗を翻す。全国の浪人たちが集められる中、名将と名高い真田幸村も大阪城への入場を果たす。しかし、幸村本人は自分は本当は凡庸な武将に過ぎず、世間が引き立てる虚像との差に苦しんでいた。そんな幸村と出会った猿飛佐助は、彼を立派な武将に仕立て上げようとするのだが。。2014年上演の日本テレビ開局60年特別舞台『真田十勇士』を堤幸彦監督・中村勘九郎主演で映画化した作品。

僕だけでなく、歴史好きな人は、戦国時代と明治維新という日本を変えた二大歴史転換点に着目している人も結構いると思います。僕自身も小さい頃は、「信長の野望」(GB版ですけどね:笑)をやりこんだ口で、図書館の小学館歴史漫画は全て読みきったくらいの歴史好きでした。NHKで真田幸村を主人公にした大河ドラマ「真田丸」が放映中(2016年時点)でもあり、自分でも人生に何度か訪れている戦国ブーム中でもあります。「真田丸」もいいのですが、真田幸村ものでは1989年に北大路欣也が主演したテレビドラマ「風雲!真田幸村」をずっと見てた頃(10歳くらい?)がピークでしたね。戦国ものなのに、なぜか毎回時代劇チャンバラがあるという不思議な作品でしたが、ヒーロー戦隊モノのようなカッコいいオープニングも見ものでした。

という話はいいとして、それくらい今も昔も幸村ものというのはドラマになるのです。NHK大河のイメージが強い中、映画で幸村ものをやるというのは相当大変なのですが、これが見てみるとなかなかいいのです。もとが舞台劇ということと、歌舞伎役者・中村勘九郎が主演ということもあり、味付けが歌舞伎風なのです。もともと「歌舞伎」の語源である、「歌舞く」という言葉は、「常識はずれ」とか「異様な様」を意味するところもあり、この映画も時代劇とか、痛快エンタメアクションとか、一言では表現しきれない、「異様なまでの楽しさ」が詰まっているのです。冒頭、予告編からは想像できないアニメーションからスタートしたり、気弱な幸村が佐助によって世紀の名将に演出させられてしまう物語であったり、淀殿が予想もしない人でぷっと吹いてしまったり(笑)、エンドクレジットの後日談もぶっとんでいたり、、と。こうした作り手の観ている側をとにかく楽しまさせたいという意気込みがビンビンと伝わってくるです。これは気持ちいいの一言。これこそ「楽しさによるおもてなし」といえるかもしれません。

こうした「歌舞く」演出は、やりすぎると浮いてしまうのですが、お話のベースに、まるでスポ根映画のような熱いキャラクターがもたらすドラマがあるので、むしろ観ていて心地よい気分になってくる。「TRICK」など一筋縄ではいかない楽しさをいつも提供してくれる堤監督の持ち味も、役者たちの味も見事にハマっています。当たり障りのない時代劇に飽きた人には、是非観て欲しいと思う作品です。