YOTARO

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場のYOTAROのレビュー・感想・評価

3.9
まるで幼少期のゲームの世界のように、鳥や虫に扮した超小型カメラが敵情を視察し、コンピュータで解析をして、スイッチによる遠隔操作で無人ドローンからミサイルを落とす現代の戦争。幸か不幸か、依然として意思決定は人間が握り、それがために、いわゆるトロッコ問題(←マイケル・サンデルの白熱教室)が「安全地帯」にいる軍人、シビリアンを悩ませる。

本作品は、一人の少女の命と引き換えに、自爆テロを阻止するか否か、という簡明な主題が貫かれている一方で、だからこそか、我が家の生計を立てるために働く「戦地の少女」と、プレゼントを強請って軍人の父親を悩ませる「安全地帯の少女」が対比されるなど、上記のようなその現代的特質に限らない戦争の惨さをありありと描き出している。

ともすると、多くの日本人は、戦争といえば未だ第二次世界大戦をイメージするであろうが、現代のそれは、その次元を一段も二段も超えている。

我が国の政治家や軍人(「自衛」隊であるが)は、この次元の意思決定に耐えうるのか、その意思決定について国民は道理的に反応できるのか。集団的自衛権容認への反対も一過的なファッションに終わり、くだらないテーマで永遠と時間を浪費する国会、メディア、その取り巻きと無垢な国民が、大戦終結後も絶えずあるいは断続的に「戦争」に対峙してきた他国と同じ次元に立てるであろうか。

本作に限らず、戦争を題材にした作品を通して、戦争について改めて考える市民が増えることを願ってやまない。
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