かなり悪いオヤジ

デッド・オア・リベンジのかなり悪いオヤジのレビュー・感想・評価

デッド・オア・リベンジ(2015年製作の映画)
3.4
舞台となっているジョージアという国についてちょっと知っておくと、この映画の見方が多分変わってくるはずだ。1991年のソ連崩壊に伴い独立した当初はグルジアと呼ばれていたジョージア。現在のウクライナ同様、西側のNATO拡大政策に反発したロシアが2008年に軍事侵攻して南オセチア及びアブハジアの独立を一方的に承認。日本においてグルジア→ジョージアと呼称が変わったのもちょうどこの頃のことなのである。親米反露のサアカシュヴィリ政権時代を経た後、現在はロシアとの関係改善を目指す中立派が政権についている。

映画公開された2015年当時は、ヴィザの獲得のしやすさや安めの物価、温暖な気候が好評をはくし、世界中からノマドワーカーたちが大挙してジョージアに押しかけたらしいのだ。この映画に出てくるアメリカ人3人組のバックパッカーたちは、そんな流行りにのっかって気やすくこの地を訪れた若者たちだったに違いない。当初は彼らに優しく接していた人々も、外国からの訪問者が増えるにつれ段々と警戒するようになり、悪意さえ抱くようになったとか。現地で平和な生活を送っていた地元住民の皆さんにとって、彼らはあくまでも“余所者”であり、厄介ごとの種子=“地雷”なのである。

この映画もよく考えてみれば、女の不義を白状させるため仕掛けられたアメリカ人同士のおふざけが招いた“悲劇”であり、グローバリズムに気安くのっかった彼らがこの地を訪れコミュニティーの平和を引っかき回すようなことがなければ、そもそも起こらなかった事件なのである。裸同然の挑発的な格好をしている女が連れの男から実はアバズレだと聞けば、フェミニズムに元々縁のない国の健康な男ならそりゃムラムラもするでしょう。自分の不注意が原因で散弾銃をぶっぱなした挙げ句、勝手にリベンジと称してあそこまでの残虐行為を働くとは....今や中国人よりもアメリカ人の方がむしろ世界では嫌われているのかも、と想像にかたくない内容なのだ。

コロナをこの地に持ち込んだのも元はといえは彼ら彼女たちだったらしく、それが外国人に対する悪感情をより増幅させたのだとか。アジア人なんかには釣り銭を投げてかえす店員も増えているらしく、ジョージアがいな旧グルジアがロシアに対する態度を改めた一つの要因にもなっていると思うのである。
「ロシアにいいところなんてあるの?」
「ウォッカにキャビア」
「石油や天然ガスもある」
「石油なんてどこで掘っても同じじゃない?」
多分それだけじゃなかったことに、今更ながら旧グルジアの人々は気づきはじめたのだろう。