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君の名は。のRenのレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
3.5
数年ぶりに再見。初見時は映画にほとんど興味が無く音楽が好きだったためRADWIMPSの印象が強かったけど、その時よりもむしろフラットに楽しめた気がする。みんな観ているしみんな好きだから感想も批評も考察も世の中に出切ってはいるけど、今更の感想を。

小説は最初から最後までほとんど一人の力で仕上げるのだから映画にもそういうものがあっていい、というのは新海誠監督の弁。『君の名は。』でメジャー路線へ行ってしまったとの世論もあって気持ちは分からなくはないが、マインドは『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』の頃と変わっていないと今回観て改めて思った。隕石衝突もの&入れ替わりもの、と人気ジャンル要素が二重で被さっている上に劇伴が邦ロック界の最前線を走るラッドだったのでそう思われがち。

実は抜かり無く新海誠癖みたいなものが中には詰まっているので、それが「オタク」ではない一般大衆の目に晒された結果賛否を生むのは当然。だけどメジャー路線っぽい皮の被り方が上手くて特大ヒットを飛ばした、というのはあれだけ騒がれる快挙だったと今になって納得できる。
因みに自分はいわゆる新海誠の作家性と言われる部分は「画面設計や映像美は好き」「性癖や嗜好はノれない部分が多々ある」というポジション。後者はとりわけ、(これも多くの人が言っているけど)女性の揺れる胸元をアップで撮ったり、スカートを切られる事件を安易に軽めに取り上げる辺りが単純にノイズだった。

ボーイミーツガールものとしても、彼らはお互いを選択的に好きになるのではなく、神的な何かに相手を選ばれてお互いのことを「知らざるを得ない」状況に置かれるという強制感みたいなものが少し引っかかる。これって文字通り時空を巻き込んだお見合いじゃん?そこがセカイ系たる所以なのだけど、ここに関してはかなり『天気の子』でブラッシュアップされていたので、余計に今作は気になった。

三葉の両親も入れ替わりを経験しているだろうと推察できるため(父親の「誰だお前?」発言、祖母・一葉ですら信じなかった三葉の妄言を信じて避難訓練を決行した、などから確実だとは思う)、「数世代に渡った呪縛と苦悩の末、瀧と三葉は初めて "入れ替わり" で誰かを救うことができた」話である、という点がとてもエモーショナル。その結果、二人の純愛の行方に希望を持てるラストで観客は感涙しガッツポーズをしてしまうのだ。
だとしたら自分はやはり、お互いがお互いに「理由を持って出会い・お互いを知り・惹かれ合う」きっかけのほうがこの作品ごと愛せた。少なくとも自分は。

その他、
○ なぜ瀧は彗星のことをすぐ思い出さなかったの?3年前の大災害なら、その近くへ行く時点で(何なら東京にいる段階で)思い当たらない?都合良く忘れてるの?
○ 引き戸やスライドドアを真横から捉えるショットが印象的。
○『前前前世』に乗せて入れ替わりの日常をテンポよく刻んでいくシークエンスの快楽。気持ち良い。
○ 入れ替わりものながら、二人をカットバックで見せるのは意外と上記のシークエンスくらい。三葉なら三葉、瀧なら瀧のシーンで一気に30分くらい見せる。106分の上映時間で焦らずかつテンポ良く感情移入させていく。
○ 序盤は説明台詞が多い。てっしー、何年も住んでいてこのタイミングで自分の町の説明するか?
○ 説明的な独り言は最後まで多い。ここを克服できない以上、自分はアニメを心から好きになれないのかもしれない....。
○ 成田凌マジで上手い。
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